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大空と錬金術師
リゼンブール

『リゼンブール、リゼンブール』

到着駅を知らせる放送に三人は荷物を持って立ち上がった。

家畜車両から羊臭いアルを出してもらい、それをアームストロングが抱える。

駅長に挨拶しながら乗車券を渡し、四人は駅を出た。


「ここが……リゼンブール」


石で区切られた広い牧場

牧場で草を食む羊達

牧場の間に点在する家

そしてそれらの上で遮られることなくどこまでも広がる大空がツナ達を出迎えた。


一行は牧場と牧場の間にある道を歩く。

数分歩いていくと不意にどこからか片足が機械鎧の黒犬が駆け寄って来た。

「デン久しぶり」

エドはすり寄ってくる犬に笑いかけると、顔を上げた。エドの視線の先には一つの家が見える。

家の前には一人の老婆が立っており、こちらを真っ直ぐ見据えていた。

その老婆の姿を確認したエドは少しだけ口端を上げた。


「ようピナコばっちゃん。また頼むよ」


そう声をかけたエドに、ピナコと呼ばれた老婆はニッと笑って煙管を噛んだ。



「……ところでエド。お客を連れてるなんて珍しいね」

ピナコはエドの隣に立つツナと、アルを下ろしているアームストロングの二人を交互に見やる。

「ああ、紹介するよ。こっちは一緒に旅することになったツナ」

ツナは慌てて「沢田綱吉です」と言いながらピナコに頭を下げる。それを確認したエドは今度は後ろを向いた。

「そんでもってこっちはアームストロング少佐」

アームストロングは優しく笑うとピナコに手を差し出す。

ピナコはその手を握ると「ピナコ・ロックベルだよ」と挨拶した。

アームストロングの手を離したピナコは、再びエドに目を向ける。

「しかししばらく見ないうちに……エドはちっさくなったねぇ」

アームストロングとエドを見比べながらしみじみと呟かれたその言葉に、エドとツナはピシリと固まる。

ツナがそっと隣を見ると、そこには怒りの表情を浮かべたエドがいた。

「だれがちっさいって!?このミニマムばば!!」

ぶちギレたエドが大声をあげる。

「言ったねドちび!!」

そんなエドにすかさずピナコは言い返した。

「豆粒ばば!!」

「マイクロちび!!」

「ミジンコばば!!」

「急に悪口の言い合い始まったーー!?」

突如始まった二人の罵り合いにツナはおろおろとアルの方を向く。

「アル!あれ止めて!!」

しかしアルは少し呆れたよう肩をすくめると、小さな声で「あれは挨拶みたいなものだから」とツナに笑った。

「あれが挨拶!?」

ツナはもう一度エドとピナコを振り返る。そして言い合いをする二人のあまりの形相に、ツナは軽く顔をひきつらせた。

そんなツナの隣では、アルが何も心配ないと言うようにのほほんとした雰囲気で二人を眺めている。そのアルの様子にツナはきっと大丈夫なのだろうと無理矢理自分を納得させると、アルとアームストロングと共に二人の喧嘩を眺めた。


一同が少しの間不毛な争いを眺めていると、不意にどこからか大きな足音が聞こえてきた。どこからだろうとツナが辺りをキョロキョロと見回すがそれらしい人影は見当たらない。一体どこから……とツナが首をかしげといるとその足音はピタリと止まった。


「こらーっ!!エド!!」


ツナ達の上方から、女子特有の高い声が鋭く飛んできた。


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あきゅろす。
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