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大空と錬金術師
資料

一行が駅についたとき、それまで黙っていたアームストロングがエドに話しかけた。

「本当に良かったのか?」

エドは唐突な質問に思わず聞き返す。

アームストロングはアルを地に下ろし、ベンチに腰かけると口を開いた。

「資料は見れなかったが石ならば力ずくで取り上げることもできたろうに」

そのアームストロングの言葉にエドは納得したように声をあげた。

「あーーー喉から手が出るほど欲しかったよ、マジで!!」

エドは眉間にシワを寄せ、目をつり上げる。しかし少しの間唇を尖らせた後、エドはゆっくりと口を開いた。

「でもマルコーさんの家に行く途中で逢った人たちの事を思い出したらさ……この町の人たちの支えを奪ってまで元の体に戻っても後味悪いだけだなーって。」

そしてエドは何てことないようにまた別の方法を探すさ、と言う。アルも兄の言葉に同意するように頷いた。

「そう言う少佐も良かったのかよ。マルコーさんの事を中央に報告しなくてさ」

エドがそう尋ねるとアームストロングは薄く笑った。

「我輩が今日会ったのはマウロというただの町医者だ」
しれっと言いのけたアームストロングにエドは歯を見せて笑った。


「あーあ、また振り出しかぁ。道は長いよ、まったく」


その時、不意に誰かがエドを呼ぶ声が聞こえてきた。

一同が声のした方を振り向くと、そこには息を切らしたマルコーがいた。

「マルコーさん……」

思わずエドはマルコーの名を呟く。マルコーは肩で息をしながらエドの方へ歩み寄ると、持っていた封筒を差し出した。

「……私の研究資料が隠してある場所だ」

マルコーの言葉にエドとツナは大きく目を見開く。

「真実を知っても後悔しないと言うならこれを見なさい」

マルコーの言葉に小さくツナは反応する。その瞳には希望よりも不安と恐怖が映り込む。

対するエドは、緊張した面持ちでマルコーを見上げる。その瞳には希望の光が揺れていた。

エドは差し出され封筒へゆっくりと腕を伸ばすと、そっと掴んだ。

そんなエドをマルコーは真剣な面持ちで見つめ、口を開く。

「……そして君ならば真実の奥の更なる真実に―――」

マルコーはそこまで言いかけて苦々しげに笑うと首を振った。

「―――いや、これは余計だ」

マルコーはゆっくり封筒から手を離すと、エドに背を向けた。

「君達が元の身体に戻れる日が来るのを祈っておるよ」

そう言って駅から去っていくマルコーに、エドは頭を下げ、アームストロングは涙ながらの敬礼を送った。


マルコーが去った後、エドは震える手を押さえながらゆっくりと封筒を開けた。

中には四つに折られた一枚のメモ用紙が入っており、エドはそれを丁寧に広げる。

そしてそこに書かれている短い文をゆっくりと読み上げた。

「『国立中央図書館第一分館』『ティム・マルコー』……」

明らかとなった資料の隠し場所に、アームストロングは納得したように頷く。

「なるほど『木を隠すには森』か……あそこの蔵書量は半端ではないからな」

エドは唇の端を上げると、メモを持つ手に力を込める。

「ここに石の手がかりがある……!!」

そんなエドにアルは力強く頷いた。

「兄さん、道は続いている!」

「――ああ!」

二人は顔を上げると、強い瞳で線路の先―――セントラルを見据えた。



そんな二人を見つめながらツナは、先程のマルコーの言葉を思い出す。

(……『真実を知っても後悔しないと言うなら』なんて……わざわざあんな風に言ったってことは……後悔する事もあるって事だよね……)

ツナの瞳が不安で揺れ動く。しかしツナはそこまで考え、それを吹き飛ばすように強く頭を振った。

(……こんなこと考えるの、やめよう。あんなに頑なに拒否していたマルコーさんが、二人に見せるって決めたんだ。……きっと二人なら、大丈夫)


ツナは一つ大きく頷くと、顔を上げた。



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あきゅろす。
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