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大空と錬金術師
拒絶

エドの話を聞いたマルコーは、ゆっくりと口を開いた。

「そうか……禁忌を侵したか……」

少しやるせなさそうな表情で、マルコーは顔を上げた。

「驚いたよ。特定人物の魂の錬成を成し遂げるとは……君なら完全な賢者の石を作り出すことができるかもしれん」

その言葉にエドは表情を明るくした。

「じゃあ……!」

エドは身を乗り出し、マルコーに詰め寄る。しかしマルコーは強く眉間にシワを寄せると首を振った。


「資料を見せることは出来ん!」


マルコーはそうきっぱりと言い切った。

「そんな……!!」

エドは抗議しようと口を開くが、言葉を発するより先にマルコーが席を立った。

「話は終わりだ、帰ってくれ。元の体に戻るだなどと……それしきの事のために石を欲してはいかん」

その言葉にエドは激昂して立ち上がった。エドの座っていた椅子が派手な音を立てて倒れる。

「それしきの事だと!?」

ツナはエドの怒りの声にビクリと肩を揺らした。

「ドクター、それではあんまりな!」

アームストロングも思わずマルコーに抗議する。しかし二人がどんなに抗議しようと、マルコーは首を振り続けた。

「あれは見ない方が良いのだ。あれは悪魔の研究だ。―――知れば地獄を見る事になる」

「地獄ならとうに見た!」

エドは歯を食い縛るように言った。マルコーはエドの言葉に目を見開く。

一瞬迷うように瞳を揺らしたマルコーは、だがしかし悲しげに瞼を落とすと首を振った。


「……駄目だ、帰ってくれ」



結局四人はマルコーに資料を見せてもらうことを諦め、家を出た。

家を出る直前、不意に振り返ったツナが見たのは、眉を悲しげに寄せるマルコーの姿だった。


駅へ向かう道すがら、肩を落として落ち込むエドとアルに、ツナは言葉をかけることが出来なかった。何故なら、ツナはマルコーがエドの頼みを断ったとき、心の内で安堵してしまったからだ。

ツナにはどうしてもあの『賢者の石』という存在が良いものと思うことが出来なかった。

マルコーがあそこまで賢者の石を否定し、資料を見せることを頑なに拒否するなら、きっとそこにはそれ相応の理由があるのだ。

(……なにせ『地獄を見ることになる』……だもんな……)

しかしそれ以上いくら考えても、漠然とした不安以外に何も分からない。超直感はツナに中途半端にしか危険を知らせてくれなかった。

駅に着いてベンチに座ったツナは溢すようにため息を吐いた。エドとアームストロングの会話が耳を通り抜けていく。

ツナはこんがらがった思考をほどく様に頭を振ると、もう一度小さくため息を吐いた。



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