大空と錬金術師
出発
トイレに離れている間に、何故かアルが箱詰め荷物状態になっていた。
「……え?」
ツナは自分の見た光景がよく理解できずに、ゴシゴシと目を擦る。しかしいくら確認しても、目の前の光景は変わらなかった。
「……なんでそんなことになってるの……アル……」
思わず聞くと、アルの隣に立っていたアームストロングが自慢気に答えた。
「荷物扱いの方が旅費が浮くからだ!」
ツナはアームストロングのその答えに驚愕する。
「えええええ!?アルの人権は!?」
しかしアームストロングは笑うだけで全く取り合う気がないようだった。
「……ツナ……僕この体になって初めて荷物扱いされたよ……」
「……どんまい……」
切符を切って列車に乗り込むと、ヒューズが見送りのために窓際まで来てくれた。
「司令部の奴等やっぱり忙しくて来れないってよ。代わりに俺が見送りだ」
そんなヒューズにエドは礼を言う。
「そうそう、ロイから伝言を預かってきた」
「大佐から?」
ヒューズの言葉にエドは軽く眉間にシワを寄せて聞き返す。
するとヒューズは背筋を伸ばし、それまでの笑顔を消して真面目な顔をした。
「『事後処理が面倒だから私の管轄内で死ぬことは許さん』以上」
思いもしない理由にツナは思わず「んなーーー!?」と声をあげてしまう。
直後ツナはハッとして横を振り返ると、隣でエドが怒りの表情を浮かべていた。
「『了解、絶対てめーより先に死にませんクソ大佐』って伝えといて」
エドの礼儀もへったくれもない返しにヒューズは真面目な表情を崩して快活に笑った。
「あっはっは!憎まれっ子世にはばかるってな!おめーもロイの野郎も長生きすんぜ!」
そこで不意に思い出したようにヒューズはツナに話しかける。
「俺もこのまま中央に戻る。ついでだからお前の仲間の事、向こうの憲兵にも聞いてみる」
見つかったらすぐに知らせてやるからな!
その言葉にツナは表情を明るくした。
「ありがとうございます!!」
勢いよくお辞儀するツナにヒューズは目を細めて笑う。
その時唐突に、汽車の発車を示す汽笛が鳴った。
「じゃ、道中気を付けてな。中央に寄ることがあったら声かけろや」
そう言って敬礼するヒューズにエドとアームストロングもそれぞれ敬礼をして返す。
敬礼の習慣がないツナはヒューズにお辞儀をした。
汽車がゆっくり動き始めると、ヒューズは敬礼をといて手を振る。
「またな!」
段々遠ざかっていくヒューズにツナとエドも窓から手を降って返した。
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