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大空と錬金術師
護衛

「悪ぃツナ……また俺達の都合になっちゃって……」

エドがそう言って謝ると、ツナは慌てて首を振った。

「全然大丈夫だよ!今のところ手がかりもないから、どう探せば良いか分からないし」

どこから探しても変わらないよ。

そう言って笑うと、エドも「そうか」と安心したように息を吐いた。

それからアルを交え三人でこれからの事を話していると、唐突に目の前が陰る。

何だろうと首をかしげながら三人が振り返ると、そこには目から涙を大量に溢れさせて感涙しているアームストロングが立っていた。

「聞いたぞエドワード・エルリック!!」

アームストロングはそう言うや否やエドに抱きついた。突然のことで避けきれなかったエドはアームストロングの剛腕に捕まり、その強い腕力に悲鳴を上げる。

「わああああ!!アームストロングさん、エド死んじゃいますから!!」

慌ててツナがエドからアームストロングを落ち着かせて腕を引き剥がすと、エドは床に手をついて荒い息を吐き出した。しかし原因であるアームストロングはそんな事にはお構い無しに空いた右拳を強く握る。

「母親を生き返らせようとしたその無垢な愛!さらに己の命を捨てる覚悟で弟の魂を錬成したその凄まじき愛!我輩感動!!」

そう言って再び抱き着こうとするアームストロングを、エドは足蹴を食らわせながら制止する。

そして直ぐ様後ろを振り返ると、早足でマスタングに詰め寄った。

「口が軽いぜ大佐」

怒りの表情で詰め寄るエドを、マスタングは汗だくになりながら目を逸らす。

「いやあ……あんな暑苦しいのに詰め寄られたら君の過去を喋らざるを得なくてね……」

ツナはそのマスタングの言葉に、心の中で頷いた。

(この人に詰め寄られたら……無理ないかも……)

当のアームストロングはハンカチで涙を拭いながらエドの方へと歩み寄る。

「と言うわけで、その義肢屋の所まで我輩が護衛を引き受けようではないか!」

突然の申し出にエドは思わず声を上げる。

「なに寝惚けたこと言ってんだ!護衛なんていらねーよ!」

噛みつくようにアームストロングに反論するエドに、リザは静かな声で話しかけた。

「エドワード君。またいつ傷の男が襲ってくるか分からない中をその身体で移動しようって言うのよ。奴に対抗出来るだけの護衛をつけるのは当然でしょう?」

事実錬金術を使えないエドは一瞬言葉に詰まるが、すぐにハッとした表情でツナの腕を掴んだ。

「でもこっちには充分アイツと対抗できるツナがいるぜ?」

エドからの思わぬ指名にツナはぶんぶんと首を振る。

「ムリムリムリムリ!!さっき俺一回生き埋めになってるからね!?」

ツナの言葉に続くようにアームストロングも頷く。

「先の戦いでツナヨシ・サワダは怪我をしてしまった。彼一人で護衛というのも負担も大きかろう!」

「それにツナヨシ一人じゃアルを運んでやることも出来ないだろ?お前はそんな身体なんだし」

二人に便乗するように、ハボックも口を出す。

「だったら別に少佐じゃなくても!」

よっぽどアームストロングが苦手なのか、エドはなお反論しようとするが、東方司令部の面々はそれを許さなかった。

「俺ぁ仕事が山積みだからすぐ中央に帰らなきゃならん」

「私が東方司令部を離れる訳にはいかないだろう」

「大佐のお守りが大変なのよ。すぐサボるから……」

「あんなヤバいのから守りきれる自信無いし」

「「「以下同文」」」

それを見たアームストロングはエドの頭に手を乗せた。

「決まりだな」

それでも嫌がるエドにアームストロングはしゃがみこんで視線を合わせる。

「子供は大人の言うことを聞くものだ」

明らかな子供扱いにエドは目をつり上げる。

「子供扱いすんな!」

それでも動じないアームストロングにエドはアルを振り返った。

「アルも何か言ってやれ!」

しかしエドが振り返った先にいるアルは、何故か目を輝かせていた。

「兄さん!!僕この鎧の姿になってから初めて子供扱いされたよ!!」

純粋にアームストロングからの子供扱いを喜んでいるアルに、エドは「駄目だこりゃ」と落胆する。

「諦めなよエド。それに護衛つけてもらった方が良いって、絶対」

そう言ってツナも説得にかかるが、エドは反論するなどで中々了承しない。

すると、マスタングが悪どい笑みを浮かべながらエドの名前を呼んだ。


「まだ駄々をこねると言うなら命令違反ということで軍法会議にかけるが、どうかね?」


結局エドは上司であるマスタングに脅しに屈服し、渋々アームストロングを護衛とすることを了承した。



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