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大空と錬金術師


真っ暗な世界

どこまでも、どこまでも続く闇

しかし不思議と自分の姿だけは見える

自分しかいない世界


(ここは……?)


ツナはその世界に見覚えがあった。どこだったろうかと記憶を辿る。

そして思い出す。

そう遠くない記憶……ここは、未来でメローネ基地奇襲の前に見た夢の世界。白くて丸い装置の存在を知ったきっかけ。

(え?でもアレは……)

白くて丸い装置のくだりまで考えてから思い出す。

後々分かったことだが、アレは骸が情報を渡すため見せた夢だったことを。


「……骸?」


名前を呼ぶと、急に寒気が襲ってきた。

それは骸がそばにいるときに感じる骸独特の気配。

「クフフ……こんなところにいたんですか、沢田綱吉」

何もなかった目の前に、突如藍色の炎が表れる。

炎見る見る間に成長し、やがて人一人分の大きさになると内側から弾けた。

そこに現れたのは、やはり骸だった。

「お久しぶりですね……とは言え、あなたは未来で僕に会ったようですが……」

そう言いながら独特の笑みを浮かべる表情は、紛れもなく骸そのもので、ツナは6日ぶりに元の世界の存在を見た。


「また随分おかしな状況に巻き込まれているようですね、沢田綱吉」


骸は何もないところに手をかざしながら言う。

「昨夜から君が家に帰らないということでアルコバレーノ達は大騒ぎをしてますよ」

骸は心底愉快そうに口元を歪ませる。

不可抗力とはいえ、リボーン達に心配をかけてしまったことに罪悪感を感じながら、ツナは骸の言葉に首をかしげた。


「昨夜……?」


おかしい。

ツナがこの世界に来てから既に6日が経過している。

それなのに『昨夜』とはどういうことなのだろうか。

そんなツナの表情に気付いた骸は「ああ……」と声をあげる。

「どうやらこちらの世界とそちらの世界とでは時の流れ方にズレが生じる様ですね」

確かに世界が違うのだから時間のあり方も違うのだろう。

ツナは骸の言葉に納得すると、最初から思っていた疑問をぶつけた。

「なんで骸はここにいるの?」

リボーン達が自分を探しているからと言って、わざわざ手を貸すような性格ではないだろうに。

すると骸はクフフと笑いながらこちらを見下ろしてきた。

「僕の可愛いクロームが君を心配していましてね。それに……牢獄の中は暇なんですよ」

きっかけはクロームの言葉なのだろうが、明らかにこれは後者の事があっての訪問だろう。
ツナは自分が今骸の暇潰しに使われているのか、と少し微妙な気持ちになる。

そんなツナに骸は「ボンゴレ十代目失踪なんて面白いゴシップじゃないですか」と笑っている。

ツナは骸を恨めしそうに見た。

「他人事だと思って……」

「他人事ですから……と言いたいところなんですが……」

不意に骸の目が細められる。

「ただ失踪しているだけなら他人事だったんですがね。異世界に行っているとなるとそうはいきません。その体はいつか僕が頂くというのに、異世界なんかでのたれ死なれては困ります」

まだそんなこと言ってんのぉ!?

ツナは心の中で盛大につっこむ。

「まあそういうわけで、今回に限っては少し協力してさしあげましょう」

マフィアに協力するなんて本当に不本意です、と言わんばかりに骸はため息をつく。しかし対するツナは心強い味方に表情を輝かせた。

「期待しているところ悪いのですが、僕は精神世界を渡ることしかできません。直接的な協力は皆無だと思いなさい」

ツナは骸の言葉に首を振る。

「充分だよ!!」

そんなツナの様子に骸は呆れたような表情を浮かべた。

「全く君は……純粋すぎるというか……本当にマフィアに向いていませんね」

不意に骸の足元が藍色に歪む。

「……タイムリミットですか……」

「え……?」

ツナは骸の言葉に驚きの声をあげる。

「精神世界とはいえ異世界に飛ぶには力を多く消費しましてね。良いですか、沢田綱吉?僕は出来る範囲でこちらの世界に君が戻る方法を探ります。ですからその間にそちらで死んだりしてはいけませんよ」

骸の体が藍色の炎に包まれる。

ツナはまるで先程の逆再生を見ているようだと思いながら口を開いた。

「獄寺君と山本もこっちに来てるんだけど見つからないんだ!もし二人について何か分かったら教えて!!」

早口で言われたツナの言葉に骸はクフフと笑う。

「おやおや、人使いが荒いですね。こちらに来るのは大変だと言ったばかりですのに……まあ良いでしょう。ついでに探しておきますよ」

骸はその言葉を残し、炎ごと闇に溶けて消えた。


その場には、ツナと闇だけが残された。


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あきゅろす。
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