大空と錬金術師
焔の錬金術師
「や、鋼の」
汽車から降りた三人を出迎えたのは、軍服を着た黒髪の青年と同じく軍服を着た金髪の女性だった。満面の笑顔である青年を目に入れた途端、エドはこれ以上なく嫌そうな顔をした。対してアルは「あれ、大佐こんにちは」と普通に挨拶をしている。
「なんだね、その嫌そうな顔は」
口元に笑みを携えたまま、青年はエドを見下ろす。エドは頭を抱え、口から悔しそうな奇声を発する。
「大佐の管轄なら放っときゃ良かった!!」
ツナは隣で女性と挨拶しているアルを見上げた。
「アル、この人達は……?」
そう尋ねると、アルは「ああ、そっか」と言って手を叩いた。
「ツナは知らないよね。二人は軍人なんだよ。こちらは中尉の……」
「リザ・ホークアイよ」
アルの言葉を引き継いだリザはツナに握手を求める。ツナは慣れない様子でそれを握り返しながら「沢田綱吉です」と自己紹介する。
「綱吉君、ね。よろしく」
そう言ってリザは微笑む。優しい笑みにツナは少しだけ頬を赤くした。
「それであっちで兄さんと話しているのが……」
その言葉の続きは聞くことが出来なかった。何故なら、複数の悲鳴で掻き消されてしまったからだ。一同は突然の悲鳴に素早く音源の方へ振り向く。
そこには血を流し呻き声を上げている二人の軍人と、拘束を軍人ごと振りほどき、息を荒くした眼帯男がいた。
目は血走っており、怒りの表情を露にしている。
眼帯男は義肢に仕込まれていたナイフを振りかざし、近付こうとする軍人達を牽制する。
リザは素早く銃を抜くと、自分の前に立っている軍服の青年に声をかけた。
「大佐、お下がりくださ……」
しかしその言葉は青年によって遮られる。
「『これ』で良い」
眼帯男は雄叫びを上げるとナイフを構え、青年の方へ一直線に駆けてきた。
青年は余裕の表情で片手を眼帯男に向けると、指を鳴らした。
小さく、何かが燃えるような音がしたと思ったら、その一瞬後には巨大な炎が眼帯男を巻き込んで燃え上がった。男は炎の爆風により吹き飛ばされ、軍人達に再び拘束される。
「手加減しておいた。まだ逆らうと言うなら次は消し炭にするが?」
体のあちこちに火傷をこさえた眼帯男は、青年に悪態を吐く。
「ど畜生め! てめえ何者だ!?」
青年は眼帯男を見下ろしながら口を開く。
「ロイ・マスタング。地位は大佐だ。そしてもう一つ
『焔の錬金術師』だ。覚えておきたまえ」
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