大空と錬金術師 ツナ 初めに会ったとき、ツナの第一印象は『普通の男の子』だった。 アルと同い年で、旅に慣れてなくて、よく慌ててよくテンパって、表情をコロコロ変える、普通の子供。 俺達と同じ、普通のガキ。 筋肉なんて全然付いてなくて、ひ弱そうで、戦いなんて知らなそうな純粋な奴。 まだ大した時間を共に過ごしたわけではない。 だが、俺は自分の考えは正しいと、そう思っていた。 ……そう思ってた。 なのに……あれは誰だ? 額と拳に橙の炎を灯し、漆黒のマントを着ているあの不思議な少年は誰だ? あそこでテロリストの放つ銃弾をものともせず戦っているのは、誰だ? あれはツナなのか? 目も口調も雰囲気もまるで違うのに? 人は見かけによらないって言うし、俺だってガキの割に強いつもりだ。だが……人はああも化けるものなのか? −−−−どっちが、本当のツナなんだ? 分からないのはそれだけではない。 ツナの額と拳から出ている橙の炎。 突然現れた漆黒のマント。 そして錬成陣も錬成反応も無しに銃弾を塵にした力。 どれも明らかに錬金術ではない。 賢者の石があったとしても、あんな芸当できるか分からない。 特に人体に直接灯り、火傷をしない温度であるにも関わらず推進力を持つ炎なんて、聞いたことがない。 理論上不可能だ。 ツナも、ツナの使う力も、何一つ分からない。 呆然としてツナを見ていたら、ツナの額から炎が消えた。 途端にそれまで感じていたピリピリとした威圧感が消え、ツナは『俺達が知っているツナ』に戻る。 その場に座り込み、ホッと息を吐いているツナに、俺は思わず声をかけた。 「……ツナ、お前一体何者だ?」 . [*BACK][NEXT#] [戻る] |