大空と錬金術師
義肢
「ふざけやがって……」
エドが言葉を切ると、眼帯の男が唸るような低い声を発した。
「何者かは知らんが人質がいる限り我々の敗北は無い!!」
「あらら反抗する気満々?残念、交渉決裂」
男の言葉にエドは余裕を持って応える。もう一度、弾けるような音が響いた。
ツナは事の終わりが近いことを察する。
『人質の皆さんは物陰に伏せて下さいねー』
エドの忠告が終わるか終わらないかで、車内から急流の川ような轟音が響いてきた。水音の合間合間で男達の叫び声が聞こえてくる。
水音はほんの数秒で止み、静かになった。
ツナは直ぐ様窓を開けて中へ入る。
車内を見渡すと、テロリスト達のほとんどが水圧で後部車両までおしやられており、残りはリーダー格の眼帯男しかいなかった。びしょ濡れとなった眼帯男は片膝をついて立ち上がる。
「まだだ!!まだ切札の人質が……」
「無駄だ」
ツナは人質となっていた四人家族を背に護り、テロリストの前に立ちはだかった。
「お前の敗けだ、テロリスト。」
そのツナの言葉に逆上した眼帯男は雄叫びを上げ、左腕の義肢を振りかぶる。
ツナが戦闘体勢に入ると同時にエドが天窓から降りてきた。
「おっ、機械鎧仲間?」
ニヤリと笑い、右手の手袋を外そうとしたところで、エドは己の背後にいる人影に気付いた。
「ツナ!?」
どうしてここに!!?そう言葉を紡ごうとするが、エドは眼帯男の攻撃でそれを阻まれた。
「こんな小僧共にィィィィ!!」
エドはツナの事は後回しにし、男との戦いに集中する。今度こそ己の右手の手袋を外した。そこから覗いた鋼の義肢−−−彼の右腕である機械鎧を用いて刃を錬成する。
「!!」
ツナはそれを見てようやく自分の感じていた違和感を正体を理解した。
(あの左足も恐らくは……)
右足と左足の足音の違い、物を掴んだ時の音、わずかに聞こえるモーター音。鋼の機械義肢により生まれるそれらがツナの感じていたエドへの違和感の正体だった。
義肢に組み込まれた銃で応戦していた眼帯男だったが、エドの鋼の刃により義肢を貫かれる。
「なんだ、安物使ってんなあ」
そのままエドは眼帯男の義肢を破壊する。
「糞ッ」
眼帯男は短く叫ぶと、懐から銃を出した。数発エドの方へ撃ち、エドを怯ませるとそのままエドの隣をすり抜ける。
「あっ!!」
エドが振り向いたときには眼帯男はツナの目の前まで来ていた。
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