大空と錬金術師
恐怖、それは
ガチャン、という金属の音にツナは顔を上げる。そこには後ろの車両に続く扉に向かうアルの姿があった。
「……アル」
ツナが呼び掛けると、アルは振り向く。ツナは一瞬言いづらそうに口をつぐんだが、すぐに言葉を紡いだ。
「……俺に手伝えること……ない?」
ツナも力になりたかった。しかしアルは首を振る。
「気持ちは嬉しいけど、危険だよ。大丈夫、僕達色々巻き込まれたお陰で結構強いんだよ!」
そう言われてしまっては、それ以上何も言えない。
ツナはかろうじて「気を付けて」とだけ言ってアルを送り出した。
(でも……やっぱり待ってるだけなんて無理だ……)
テロリストは恐い。恐いが、エドやアルが怪我をすることの方がよっぽど恐い。
ツナはアルの金属音が遠くに行ったことを確認すると、鞄からツナの武器を取り出した。ヘッドホンとコンタクトを装着し、手袋をはめる。死ぬ気丸を掌に握ると、そのまま前側の車両へ続く扉を抜けていった。
「……あれ?」
後ろ側のテロリストを(主にテロリストの自爆という形で)早々に倒したアルは、すぐに元の車両まで戻ってきた。しかしそこで首をかしげる。
ツナがいない。
「ツナ……?」
呼び掛けるが返事はない。アルは近くにいた乗客に話しかけた。
「すみません。ここにいた蜂蜜色の髪をした東洋系の男の子……どこにいったか分かりますか?」
すると、驚くべき答えが帰ってきた。
曰く、前部車両の方へ走っていった……らしい。
アルは驚き、そして慌てた。協力したいとは言われたが、まさか一人で行くとは思わなかった。すぐにアルは前の扉をくぐり抜けていく。
(無茶する子には見えなかったのに……!)
むしろ争い事を嫌い、危険なことは極力避けるような子だと認識していた。
(無事でいてよ……!)
アルは走りながら新しい友人の無事を祈った。
.
[*BACK][NEXT#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!