大空と錬金術師
錬金術師
「俺達の他に機関室に二人。一等車には将軍を人質に四人。一般客車の人質は数ヵ所に集めて四人で見張っている。」
「他には?」
「本当にこれだけだ!!本当だって!!」
エドによる暴力と言う名の制裁の後、テロリスト二人は縄で縛られ、尋問を受けていた。エドの攻撃がよっぽど痛かったのか、男はエドが拳を作ると怯えたような表情をした。
「まだ十人も!?」
「どうするんだ?仲間がやられたと分かったら奴等報復に来るんじゃ……?」
男の持つ情報を聞いて辺りがざわめき始める。
「誰かさんが大人しくしていれば穏便に済んだかもしれないのにね」
やれやれ、といった様子でアルは肩をすくめた。
「過去を悔やんでばかりでは前へは進めないぞ弟よ!!」
自分の失態を分かっているからかエドはカッコいい台詞で誤魔化そうとする。
「しょうがない。オレは上から、アルは下からでどうだ?」
そのまま現状をどう切り抜けるか話し合い始める兄弟。
そんな二人に、ツナは声をかけた。
「君達は……何者なの……?」
唐突な質問。だが、その答えをこの車両に乗っている全ての人間が知りたいと思っている。
ツナを振り返ったエドワードは不敵に笑った。
「錬金術師だ。」
「錬金術師……」
ツナに一度頷くと、そのままエドはツナとアルを置いて列車の屋根へ登っていく。
周りでは不安そうな声もあったが、ツナは『エドは大丈夫だ』と直感的に感じていた。
(大丈夫だとは思うけど……錬金術師って……?)
錬金術……といえば、ゲームや漫画でよく出てくる魔法みたいな力……という認識でツナも知っている。しかしあれは想像上の術だったはずだ。昔は魔術と同じで真剣に研究されていたらしいが、今では『架空の存在』として扱われている。
(……でも幻術だとか呪いだとか……匣兵器さえ現実にはあるしな……)
自分も普通から見たら充分普通じゃないファンタジックな世界に身を置いている。とりあえず今はテロリストの方が重要だと、無理矢理納得してしまう事にした。
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