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大空と錬金術師
嵐の守護者

「やられた!!」

獄寺の嘘に気付いたツナが部屋を飛び出すのと、兄弟の部屋から叫び声が聞こえてきたのはほとんど同時だった。ツナがドアを開けて兄弟の部屋に入れば、そこには頭を抱えたロスとブロッシュの姿があった。二人の背後には開け放たれた窓と、そこに垂らされたシーツだったものがあり、いるべき兄弟の姿はどこにもない。

「やけに静かだと思ったら……あのガキども〜〜〜っ!! 護衛の身にもなれっていうのよ!!」
「あ〜〜〜職務怠慢でアームストロング少佐に搾り上げられるぅ〜〜〜」

嘆くブロッシュの隣でロスは悔しそうに歯噛みする。普段兄弟の前では隠している本音が零れ落ちている様子から、よほど頭に来ているのだろう。

「こっちに来たって事はツナヨシ君の所には来てないのよね……何か話だけでも聞いてない?」
「いえ特には……けど実はこっちも獄寺君が戻ってきてなくて……」

ツナが事情を話せばますます二人は顔色を悪くした。

危険と思しき場所に護衛対象と一般人、それも14歳15歳の子供が3人。職務怠慢で搾り上げられるどころか、下手をすれば責任問題だ。

「行くわよ!!」

ロスは上着を引っ掴んで部屋を飛び出す。

「え……どこへ!?」

ブロッシュは困惑しながらロスを追いかけて部屋を出る。ツナもまた、二人を追いかけた。

「決まっているでしょう! 元第五研究所よ!!」



「せっかく遊ぶのだから、貴方の名前も教えてよ子犬ちゃん」

No.32改めレッド・レッグは獄寺を指さす。獄寺は人指し指にはめたボンゴレリングがよく見えるよう、胸の前で拳を握りしめる。リングに真紅の炎が灯り、揺らめいた。

「ボンゴレ十代目ファミリー嵐の守護者、獄寺隼人。てめえを倒す男の名だ、よく覚えて……んで、果てろ」

獄寺が左手でダイナマイトを5つ着火させ、投げる。それと同時に横へ駆け出した。爆発音が鳴り響く。反対側からは金属の弾ける高い音が絶え間なく鳴り響いており、エドとスライサーが戦闘を再開したことが分かる。

「残念だけど、こんな爆発怖くないの。だって体がないんだもの」

先ほどまでのレッド・レッグの戦いを見ていた獄寺にとって、そんな事は言われるまでもない事だった。彼女の言葉を無視し、次々にダイナマイトに着火させてはレッド・レッグへ投げる。ダイナマイトは高さを変え、標準を変え、レッド・レッグの周りで立て続けに爆発する。

「一芸しかないのかしら? 駄目よ、そんなのツマラナイ」

止まることのないレッド・レッグは笑いながら回し蹴りを繰り出す。獄寺は身を反らしてそれを避けるが、身を翻した追撃までは避けきれなかった。獄寺の肋へ踵が食い込み、みしりと嫌な音が鳴る。獄寺は歯を食いしばりながらもレッド・レッグの脚に腕を絡めた。

「捕まえたぞ」

反対の手でチビボムに着火し、獄寺はレッド・レッグへバラバラと降りかける。

「は!?」

レッド・レッグは左肩を引いて身をよじり、右手でダイナマイトを払って防ごうとする。しかし全てを避けきれずその身に小爆発を浴びた。衝撃にレッド・レッグの頭部が弾け、遠くへと転がっていく。当然爆発の余波は獄寺へも降りかかり、獄寺は耐えきれずレッド・レッグの脚を手放した。

「避けたな?」

しかしそんな衝撃は屁でもないというようにすぐに起き上がった獄寺は口角を上げる。

「最初の爆撃の時も、今も、お前ダイナマイトを避けてたな? 当たっても痛くねえはずなのにそうしたのは、万一壊れたら不味い場所に―――血印のある『左腕』に当たりそうだったからじゃねえのか?」

起き上がったレッド・レッグは先ほどまでの楽しそうな様相を顰め、警戒するように身を屈める。

「それを知りたいからって至近距離で爆発させる? 生身の癖に」

獄寺は両手でダイナマイトを持てるだけ持つと、レッド・レッグの左腕を狙って投げつける。

「『常に攻撃の核となり、休むことのない怒涛の嵐』……手前の攻撃にビビるようじゃ嵐の守護者は務まんねえんだよ」



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