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大空と錬金術師
マルコーの研究書
「いやぁ、すみません。かなりの量だったもので写すのに5日もかかってしまいました。これが、ティム・マルコー氏の研究所の複写です」

シェスカの家に着くと、笑顔でシェスカはそう言って机いっぱいに積みあがる紙の束を指し示した。

「本当にやった……」
「世の中にはすげー人がいるもんだなぁアル……」

兄弟はやはりどこか半信半疑だったようで、紙の束を見てただただ驚嘆していた。やがておもむろに紙の束を手に取ると、その量の多さにも驚愕する。

「うわぁ……そうか、こんなに量があったんじゃこれ持って逃亡は無理だったんだねマルコーさん」

ツナも実際に一束手を取ってみる。ずしりと重いそれを捲ってみると紙にはびっしりと英字が綴られており、シェスカのすごさにしみじみと感動した。そんなツナに隣に立つ獄寺が「十代目のためなら俺だって……!」となぜか燃えている。しかし意味もなく頁を捲るツナの手元を見て獄寺は眉を顰めた。

「これ本当にマルコーさんの?」

一方エドは喜びを隠しきれない顔で改めてシェスカに確認を取る。シェスカは満面の笑みでうなずいた。

「はい、間違いなく。

―――ティム・マルコー著の料理研究所『今日の献立1000種』ですっ!!」

その言葉に一瞬にして場の空気が固まった。シェスカはそんな周りの空気に笑顔を浮かべたまま首を傾げる。ほどなくして我に返った兄弟が手元の資料を捲る。

「「えぇぇぇぇえええ!!?」」

その声はセントラルの住宅街全域に響き渡った。



「『砂糖大匙一杯に水少々を加え』……本当に今日の献立1000種だわ……」

ロスが引きつった顔で研究書を閉じる。その後ろではブロッシュが「これのどこが重要書類なんだね!!」とシェスカを問い詰めていた。覚えたままを写し取っていたシェスカは何の事か分からずに必死に首を振っている。

「……同姓同名か?」

獄寺の声にブロッシュとロスが大きく肩を落とす。シェスカが嘘をついている様子はないし、もはやそうとしか考えられなかった。

2人が賢者の石の手がかりを必死に掴もうとしていたのにこんな結果になってしまって、きっと酷く気落ちしているだろうと、そしたら自分はなんと声をかければいいのだろうかとツナは恐る恐る隣の二人を振り返る。しかしそこに予想していた二人はいなかった。エドもアルも気落ちどころか、献立書を真剣な表情で読みふけっている。

「これ本当にマルコーさんの書いたもの一字一句間違いないんだな?」

「はいっ!間違いありません」

エドの言葉にシェスカが自信を持って頷くと、エドは献立書から顔を上げてニッと笑った。

「あんたすげーよ。ありがとな」

そう言ってエドは懐から手帳と万年筆を出して、手帳に何やら書き込んでいく。書き終えるとそのページを破り取って銀時計と共にロスに渡した。

「ロス少尉!これ俺の登録コードと署名と身分証明の銀時計!大総統府の国家錬金術師機関に行って俺の年間研究費からそこに書いてある金額引き出してシェスカに渡してあげて」

それだけ言うとエドは抱えられる限りの紙束を抱えて、アルと共に意気揚々とシェスカの家を後にする。ツナと獄寺は同様に紙束を抱えると、訳が分からないまま2人の後を追いかけた。直後、何故だかシェスカの家からシェスカとロスの絶叫が聞こえた気がしたが、そんなことを気にしている余裕はなかった。

「え、ちょっ、どういうこと?」

説明を求めても、「ここじゃちょっとな」と言うばかりで、結局国立図書館に着くまで何も教えてはくれなかった。


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