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大空と錬金術師
希望の光

シェスカの言葉が理解できず聞き返す兄弟に、シェスカはケロリとした表情で繰り返す。

「一度読んだ本の内容は全部覚えてます。一字一句間違いなく。時間かかりますけど、複写しましょうか?」

シェスカが何でもないことのようにいったその言葉に、兄弟は一瞬あっけにとられる。しかしすぐに我に帰った二人はもろ手をあげて喜んだ。

「ありがとう本の虫!!」

「虫ですか……」

エドは喜びのあまりシェスカの両手を握るとブンブンと揺する。あんまりにあんまりな敬称にシェスカは苦笑いするものの、喜んでもらえているのが嬉しいのか、やがて兄弟にはにかむようにして笑い返した。

「良かったね、アル」

嬉しそうにガシャガシャと鎧を揺らしているアルにツナが声をかける。アルはその言葉に「うん!」と大きくうなずいた。



今日のところは一旦おいとますることにする。帰る前にエドは複写が出来た時の連絡先としてシェスカにホテルの電話番号を渡していた。

「世の中すごい人がいるもんだね」

家から出てツナが呟くと、「お陰で助かったよ」とエドが嬉しそうに笑う。

「あの特技活かしゃ簡単に再就職先にありつけそうなもんだけどな」

その獄寺の言葉にツナは大きくうなずく。自分に自信のなさげなシェスカだったが、あの特技は充分人に誇れるものだった。

「次会うときにシェスカさんに言ってみよっか」

そんなことを話しながら一行はホテルへ帰るため、車に乗り込んだ。



それから複写が出来るまでの数日間は暇をもて余していたので、ツナと獄寺は山本を探すために街の役場や駐屯所等を練り歩いていた。エドやロス、ブロッシュも協力してくれたこともあり、何の障害もなく人探しを進めることが出来た。しかし、中央本部に集まる国中の情報を駆使してさえ、山本の影すら掴むことはでなかった。

「山本はこっちには来てないのかな」

5日目の夕方、その日の捜索を終えてホテルへと戻った一同は、明日はどこを探すか話し合うためエドとアルが借りている部屋に集まっていた。ロスとブロッシュは護衛として部屋の外で入り口を見張っている。そんな中、探しても探しても手がかりすら掴めない現状に意気消沈した様子のツナがポツリと溢した。

「いや、多分こちらに来てますよ」

獄寺はこの世界に来てしまった日の事を思い出すように遠くを見つめて言った。

「あの日俺は野球馬鹿のすぐ隣で、アイツが青い光の陣に飲み込まれていくのを見ました。その直後、同じように光の陣に飲み込まれた俺がここにいるんですから、アイツだってこちらに来てるはずです」

二人の後、同様に光の陣に飲み込まれたツナも頷く。

「そうだよね。ごめんね、獄寺君」

思わず現実逃避してしまったことを謝ると、獄寺は笑って首を振った。しかしその笑みは誰が見てもわかるような作り笑いで、獄寺も不安なのだと言うことが伺えた。

「青い……光の陣……?」

そんな二人の会話に引っ掛かりを覚えたエドが、考えるように呟く。

「ツナ達がこっちに来たとき、青い光の陣に飲み込まれたのか?」

確認するように尋ねるエドに、そういえばこちらに来たときの話しはしていなかったことを思い出しながらツナは頷いた。

「うん。こう……青い稲妻みたいな光が走ったと思ったら、足元に魔方陣みたいな複雑な模様の陣が浮かび上がって……そこに吸い込まれたんだ」

エドはツナの言葉に再び考え込むように俯く。そしておもむろに両手をパンと合わせると、メモに使っていた紙に向けた。紙は錬成反応を示し、瞬く間に折り鶴に変貌する。

「ツナの言う『青い稲妻みたいな光』って、今の錬成反応の光じゃなかったか?」




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