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▽コイハモウモク/切原











「優雨センパーイー!!」


『ん…?どぉわっ!!』



昼休み、いつものように購買でメロンパンを購入、さ!教室戻って至福の一時…―なんて、思っていると後ら勢いよく突進された。


そんなことをする人なんてただ一人しかいなくて…




『痛いんだけど、赤也…そしてあっついから引っ付くな…!!』


「へへっ、いいじゃないっスか!細かい事はいいっこなしっスよ!」




この無駄に勢いと元気がいいワカメ…通称赤也はあたしの一つ下の学年、いわゆる後輩ってやつだ。




……と言ってもあたし、帰宅部だから特に接点もなかったはずなんだけど…、


何故か、



ホントに何故わからないが懐かれている


廊下で発見される度抱き着く…というか突進してくるし



あたしが教室でのんびりとしてるとわざわざ2年生の階から会いにくるしで…


『どうしてわざわざあたしなんかに会いにくるのかな、君は』

「そりゃあ優雨先輩に会いたいからに決まってるじゃないっスか!」


『なっ…?!』


「あ、赤くなった」


『なってなーーいっ!!!』




どこぞの天然のタラシだこの子はっ!!なんてツッコミたくなる台詞も多々言うし…



それでも憎めないとこが困ったことだけど、




「先輩、今日の放課後暇っスか?」


『ん?特に用事はないけど…どうして?』


「俺、テニスの練習試合あるんスよ!先輩、応援きてくださいよ」


『うーん、まぁ気分がのったら、ね?』


「えー!!なんスかそれっ!!」



ちぇっ、と拗ねはじめる赤也。

…不意にも可愛いだなんて思ってしまったのは秘密にしておこう、うん。



『…いけたら』


「え?」


『いけたら、ちゃんと行くよ。』



少し照れ混じりに言うと赤也は嬉しそうにニカッと笑う


表情がコロコロとかわるな赤也は…


「ホントっスか?!約束ですからね!!」


『え?!いや、だから』


いけたらね、と言うまえに赤也は「それじゃあ俺、教室戻りますね」なんて嵐のように去って行ってしまった



『もぅ…、人の話を聞きなさいよ…』




なんて思いながら少し心臓がドキドキしている自分が一番の困りものだ



「ずいぶん懐かれとるな」


『ぎゃっ?!…って…、なんだ仁王か』


「なんだとは酷いのぅ」


『いきなり背後に現れないでよ』


仁王とは3年間同じクラスの腐れ縁でなんだかんだで突っ掛かってきたりからかわれたりしている


って、腐れ縁っていうより遊ばれてるんじゃないかあたし…




『あんたのとこの後輩は元気だねー相変わらず』


「なんじゃそれ、優雨は懐かれて満更でもないって感じやったけどな」


『んなっ…?!』



そんなことない!と否定しようとしたが言葉を濁してしまう、


いや…実際満更でもない、とかそういうの以前に



「好きなんじゃろ、赤也が」


『………なんでそうズバッと言うかなー、あんたは』



はぁぁ、と思わずため息をつく。


そりゃあ…ため息もつきたくなる。
テニスの試合をしている姿を見て一目惚れをして、


何故かはわからないけど赤也に懐かれたのはすごく嬉しかったけど、それはあくまでも“先輩”として、だし…



おまけに赤也はムカつくほどモテるし、あたしなんかが付き合う、だなんて一生かかっても無理なことなんだ


「お前さんはもう少し素直になってみんしゃい」


『それができたら苦労しないのですよ仁王くん』



あたしがそう言うと仁王はしばらく考える素振りをみせてからニヤリと笑みを浮かべる




「なぁ、優雨」


『な…なに』


「今日の放課後の練習試合、必ず来るんじゃよ」


『え?なんで』


「なんでも、じゃ。俺が一皮ぬいじゃるきに」


『へ??』


「なんでもなか、とりあえずお前さんはちゃんと放課後の応援、来るんじゃよ」



そう一方的に言うとふらりとどこかに言ってしまった



またサボる気かアイツ…



ってか何?!あたし一方的に約束確定された?


“一皮ぬいじゃるきに”


って何する気だ仁王は



『はぁ…なんなんだ一体』


本日2度目のため息をつき、さっき買ったメロンパンを食べながら教室にもどった











そんなこんなで放課後、




不安な気持ち半面、赤也の試合してる姿を見るのは久々で少しワクワクした気持ち半面で、




テニスコートの側まで歩いて行くとパコーンとボールの弾む音がきこえたり真田くんの雄叫びらしき暑苦しい声が聞こえたりしている






『あ…いた』



フェンスの向こう側に赤也の姿が見えて少しドキリとした



あたしが初めて赤也を見た時と変わらず、すごく楽しそうにテニスをしてる


無邪気っていうかなんというか…



まぁ、好きになった要因でもあるんだけどね



「来たか」


『ぎゃ?!…って仁王…だからいきなり背後にっ…?!』



現れないで、と言葉を続けようとすると仁王は後から急に腕を回してきた



え…なんだ、なんであたし仁王に抱きしめられてるんだ…




『…え?なに?!』


「いいから大人しくしんしゃい」


『いやいや!!いいからはなせ!―…ガシャン!!



ぎゃあぎゃあと仁王と攻防しているといきなり背後から仁王を掠めてフェンスにテニスボールがめり込んでいた




「何してるんスか、仁王先輩」

『あ…赤也』


何事かと思い、ボールが飛んできた方向をみると至極不機嫌な様子の赤也が…


あ…あれ?赤也、なんだか目が充血して…



「優雨先輩から離れてください」


「嫌じゃと言ったら?」


「……」


挑発的な仁王に赤也は苛立ったように顔をしかめて、ずんずんと近づいてきたと思いきやあたしを仁王から引っぺがし腕を掴んで仁王を残したまま歩きだした





『ちょっ…ちょっと赤也?!』


「……」





しばらく無言で引っ張られてきたのはテニスコートからは少し離れた校舎裏、



歩くのをやめても赤也は無言のままで…

なんだかその空気に堪えられなくなり恐る恐るもう一回名前を呼んでみる



『あ…赤也??』


「……先輩は」


『へ?』


「先輩は仁王先輩の事が好きなんスか?」


『はぁ?!なんで!!』


「あの状況見たら誰だってそう思う」


『いや…だからね!あれは仁王が勝手に…「俺は…」


『??』


「俺は先輩が好きだから他の男に先輩が触られるのは嫌だ」


『…え』


そう言って赤也はぎゅうっと正面から抱きしめてきた



あ、あれ…?

これって…これって…



『あ、あたし…告白されちゃってる?今』


「……この状況でそれ以外ないじゃないスか」


いきなりのことで頭がついていかず我ながら間抜けな質問に赤也は半ば呆れ気味にため息をついた


「俺、わかりやすく接してるつもりなのに先輩、全然気がつかないし…。どんだけ鈍感なんスか…」


『いや…だ、だって…そんなこと言われても』


「でもまぁ、今ちゃんと伝えたスからね。…で先輩、返事は?」


『へ、返事って…』


「まぁ…返事は"はい"か"Yes"しか受付けてないっすどね」


『それって選択肢ない…っ?!』


あたしが反論の言葉を言い切る前に唇に何か柔らかいものが重なって


それが赤也のそれだと気づいて顔が熱くなりながら赤也をみると、してやったりと言わんばかりの顔をしていた


「先輩に選択肢なんてないっすよ、何がなんでも俺のもんにするんで覚悟してくださいね」



そんな大胆不敵な笑みを浮かべる君をみて不覚にも…

やっぱり好きだなぁ…なんて思ってしまった。






--コイハモウモク--




「先輩が嫌だって言っても追いかけるっす!俺」


『……別に嫌とは言ってない』

「……は?」


『だーかーらー!!あたしだって赤也が好きなの!!……人の話は最後まで聞きなさい、バカ也』

「〜〜〜っ!!先輩!!!大好き!!」

『ぐぇ?!く、苦しい赤也〜!!!!』










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