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▽That's another/幸村




恋愛、だなんて



気がつけばいつの間にやら 溺れていて…




一度溺れたら、抜け出せる方法なんてないんだ…―















***That's another*****










「やっぱり部活だったら、テニス部がかっこいいよねっ!」


「わかる〜!わたし的には仁王くんが…」





お昼休み、いつもの様にグループの友達と他愛ない会話をしていた


今日の話題は、テニス部のかっこいい人がどうとか…



うー、あたしはやっぱりこの手の話が苦手だ



「優雨は、テニス部の人だったら誰がかっこいいと思う?」


「えっ?え…とね…」


いきなり話を振られ、15秒くらい返答に困っていると、



「優雨ってさ…男子とかの話になるとさっぱりだよね」


痺れを切らした友達がため息まじりにしみじみ言った



「いや、だってさ興味ないもん」


「男子に興味ないって…純粋ってゆーかなんとゆーか…」

「優雨の場合鈍いだけだって」


「ひどっ!!あたしだって恋愛くらいいつかはするよっ!」


「いつかってあんたね…だいたい、優雨は幸村くんって言うかっこいい幼なじみがいるじゃない」


「……」



“幸村”その名前に黙ってしまう…




そう、幸村はあたしの幼なじみで


確かに、勉強もテニスもできる完璧な人なんだけどさ…




でもね…



でも……幸村は…








…―とんでもなく腹黒いだけの大魔王なんだっ!


もう、黒いのレベルをこえた黒だよ





それを知らない周りの子たちは性格いいだの何だのと…




「羨ましいなぁー、幸村くん優しいし、かっこいいし、勉強もテニスもすごい…しまさに欠点ないよね」


ねー、と皆で頷いている




「あのね、みんな…絶対誤解してるって…」


「誤解?」


「うん、幸村って実はすっごい…「俺がどうかしたの?」



…………え






あの、えぇっと…



後ろからはすごいただならぬオーラが…




現実逃避したい気持ちをグッと堪え、恐る恐る後ろを見るとそこには




「ゆ、幸村……」



腹黒大魔王幸村がいました




「あれ、なにその反応、傷つくなぁ」


なんてニコニコしながら近づいてきた大魔王様は友達からは見られないとこを思いっきりつねってきた



「痛゛っっ!!」


「どうかしたのかい?優雨」


「………ナンデモゴザイマセン(……この腹黒大魔王めっ…)」

「ん?何か言った?」


「痛っ!!言ってません!何も言ってません!」



そしてたまに心が読めるエスパーかと思う時がある



そんなやり取りを見ていた友達が羨ましいといわんばかりの顔をして言った




「ホントに仲いいよね〜二人とも」


「え゛…いやいやいや、仲いいってかあたしが一方的にイジメられてる…「ふふ
っ、仲はいいよね?優雨?」



ね?…と、くぎさされるし…
ほんとどこまで腹黒いんだ幸村氏



そんな幸村の言葉にいいなぁ〜、なんて声が聞こえるし…



「……で、幸村はなんか用できたんじゃないの?」


幸村とはクラスが隣同士で、幸村が昼休みにこっちのクラスに来るときはなにかと用がある時


「あぁそうそう、優雨今日用事ない?」


「?別にないけど…」


「だと思った。それなら今日の放課後にテニス部の臨時マネージャーやってくれないかな?」


「……ちなみに拒否権は?」


「ふふっ、ないよ」


「はぁ、やらせていただきます」








ニッコリと微笑まれ脅迫されたら、断れるわけもなくて…


強制的にマネージャーをやらされる始末…


まったくこの男は幼なじみをなんだと思ってるんだか






そんなこんなしているともう放課後で、ご丁寧に幸村があたしの教室に迎えにきてくれてコートまで引きずられていった






「集合!」



皆のスポーツドリンクを用意しながら幸村が部長をやっている姿をチラリと見る


立海大付属のテニス部部長、とだけあってやっぱりしっかりしているなぁ、と少し不意にドキリとしてしまった




「ん…?」


コートの柵の外にはたくさんの出待ちの女の子たちがテニス部員たちに視線を送っていた


(やっぱり幸村もモテるんだろうなぁ…)

なんて考えるなんだか胸がモヤモヤした






「優雨?」


「へ?!」


いつの間にかそばに立っていた幸村の声に、自分の手が止まっているのに気がつ



「なにボーっとしてるのさ、タオル、お願い」


「あ…ごめんごめん。はい」



あたしが急いでタオルを渡すと幸村はありがとう、と受け取って汗を拭いてから
またコートの中に戻っていった





あたしは何故か少しドキドキとしながらしばらく幸村の背中を見つめてた














『お疲れ様でしたっっ!!!』



空がが夕焼けに染まって真っ赤になって、やっと練習が終わり

部員たちは着替えてそそくさと帰っていった


まぁ、臨時マネージャーのあたしは記録の記入があって一人残ってますけど(幸村コノヤロー)


さっさと書いちゃって帰ろう、と思いペンを走らせていると部室のドアが開いた



「……あれ、幸村。帰ってなかったんだ」


「まぁね、優雨もそれ早く書き終わりなよ。待っててあげるから」


「いや、待っててあげるからって…一方的に押し付けたのは君だろう幸村君」


「何か言った?」


「今すぐ仕上げちゃいます、はい」



またも幸村には敵わず終いで、はぁと心のなかでため息をつきつつも、記録を書く




「幸村はモテモテだね。相変わらず」


「…何、急に」


「なんとなく」


ペンを走らせながらふとそんな事を言ってみる



「出待ちの子、たくさんいたし」


「……優雨?」


「クラスにだって、幸村のファンもたくさんいるし」


「優雨、どうかしたの?いつもより変「それにっ……」



わからない……けどイライラモヤモヤする



「幸村が好きな人だってたくさんいるんだ」


そう思うと心が苦しくて堪らない



思いついたまま言葉を言うと幸村は言葉を詰まらせる


あたしはというと記録を書く振りをして顔を伏せていた





「……って、何言ってんだあたし。ごめん、今のはなかったことに…」


そう言おうと顔をあげると幸村が近づいてきてあたしを引っ張り椅子から立たせるとそのままふわりと抱きしめた



「なっ…?!」


「それってどういう意味?」


「何がっ…?!てか!はっ…離して」


「それは却下。俺の質問に答えて。優雨は今、どんな気持ち?」


「どんな気持ちって…わ、わからないよ!!」

幸村の体温を感じるとなおのことドキドキと心臓が飛び跳ねた

落ち着け心臓っ…!!!!!


てかちょっと待って、なんであたしは幸村に抱きしめられているんだ



「じゃあもっと簡潔にいこう、………俺のコト好き?」


「……へ?」


スキ…?

すき………


好き?!


「な、なんで!?」


「なんでって…だから質問してるのは俺なんだけど」


早く答えて、と幸村はあたしの顎を持ち上げて距離をさらに近める


あまりの至近距離にあたしの顔がみるみる赤くなっていってるのがわかった


「す…好き…なの…?」


「ふふっ、なんで疑問形なのさ」


案外するりとでたあたしの言葉に幸村は優しく笑う


そして顔を傾けながら近づけ、あたしが驚く暇もなく唇に幸村のそれが重なった


「俺は、好きだよ。優雨が」


「なっ…?!なに…?!」


いきなりの超展開に頭の思考がついていってないあたしに幸村は頬にキスを落とす



「優雨、俺のこと好き…―?」



「好き……かも……」





二度目のそんな質問に小さく頷くと幸村はぎゅうっときつく抱きしめてきた



「引き金を引いたのは比奈なんだからね、ちゃんと責任とってよね」



あぁ、あたしの一生に一度きりの初恋を……










とんでもないのに捧げてしまったのかもしれません…―

















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あきゅろす。
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