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小説(ファンタジー)
2
「ケビン!見て、お花が綺麗だよ!!」
 綺麗な顔つきの青年が年に見合わない幼い口調で、同じ年頃の青年を呼ぶ。
「本当ですね、アシュレイ様」
「これで花冠作ってケビンにあげるね」
「ありがとうございます。楽しみにしていますね」
「うん!一生懸命作るね!!」
 アシュレイは楽しそうに色とりどりの花々を摘み始める。
 ケビンはその様子を見守るように見つめる。
 ケビンの主であるアシュレイは、2年前、政略結婚でディスハード公爵に嫁いだ。その頃はまだ年相応の精神状態だったアシュレイだったけれど、1年前にその心は壊れてしまった。
 沢山を我慢して、我慢してその結果だった。
 幼い子供のようになってしまったアシュレイを夫であるディスハード公爵は早々に見捨てた。元々愛のない関係だった。邪魔になった形だけの妻に時間を割くことも、心を割くことも彼には不要のものだった。
 ディスハード公爵は、アシュレイを自らの領地の片隅にある屋敷に追いやった。
 その後、ケビンが耳にした噂では、彼の恋人であった女が本宅で女主人として置かれているらしい。
 だが、元が平民上がりの娘に公爵家の女主人という重大な役目が務まるはずがないとケビンは考えている。彼らは家の名を背負うという意味を知らないからだ。
「ケビン、できたよ〜!」
 アシュレイが出来上がった花冠をケビンの頭にのせる。アシュレイが一生懸命編んだそれはとても綺麗だった。
「ありがとうございます。一生大切にします」
 ケビンが褒めるとアシュレイは恥ずかしそうに、そして、嬉しそうに無邪気な笑みを浮かべた。

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