小説(ファンタジー)
5
「…益などないでしょう。しかし、知らなければいけないのです。そうでなければ、私は前に進むことができません」
…ジークフリート様?
「申し出を断られた時、諦めようと思いました。でも、ノエル様に想い人がいらっしゃると聞き、居ても立ってもいられませんでした。だから、直接、ノエル様からその方のことを聞けばきっと諦めることができると思ったのです。…お願いです、ノエル様。立場も身分も弁えず、可愛らしい貴方の隣にありたいと大それた想いを抱いた私に最後の憐れみを注いではいただけませんか」
…これは、夢なのだろうか?
それとも僕の耳が幻聴を聞かせているのだろうか。
だって、彼がこんなことを言うはずがない。
だって、これではまるで彼が、僕のことを………。
「ノ、ノエル様!?」
慌てたように彼が僕の名前を呼ぶ。
「何故泣かれるのですか!?わ、私のせい…ですよね…」
「ち、違います!」
僕は思わず叫んでしまった。
もし、僕の勘違いじゃないなら。これが本当に現実だというのなら。
言っても、いいのだろうか。
「僕、僕は………」
でも、言葉が、上手く紡げない。
そのことがすごくもどかしい。
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