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小説(ファンタジー)
3
 ある日、僕は兄様にお茶に誘われた。
 断る理由もないから、昼ごろ、兄様の執務室にお邪魔した。
「ああ、よく来たね」
 兄様は笑顔で僕を出迎えてくれた。
 僕は、兄様の向かい側に座る。侍女がお茶を僕の前に置く。
「兄様からお誘い下さるのは珍しいですね」
「実は、ノエルに聞いてもらいたいことがあるんだ」
「何でしょう?」
「うん。ある奴がノエルとの婚姻を申し出ていてね。もし、お前が良ければなんだけれど」
「…婚姻、ですか…」
 僕も、もう今年で15歳だ。
 そんな話が出てくるのは分かっていた。
 だけど………
「相手も、お前が結婚しないと公言していることは知っている。だが、私も相手とは長い付き合いでね。あいつが10年間、お前にずっと懸想してきたことを知っている。だから、あいつの願いが叶えばいいとも思う」
 兄様がその人のことを本当に大切なんだと分かった。
 10年間、ひとりの人を想い続ける辛さはよく知っている。
 僕も同じだけの歳月、彼だけを想っていたのだから。
 でも……
「申し訳、ありません、お受けできません」
 僕には、できない。
「…僕は、幼い日から好いてる方がいるんです。だから、その方以外と結ばれることはできません」
「…付き合っているの?」
 兄様の言葉に僕は横に首を振った。
「僕が、その方と結ばれることは決してありません」
 だって、彼は兄様のモノなのだから。
「そうか…分かった。私の方から断っておくね」
「…お願いします」
 自分で言っていて辛くなってしまった。
 そんな僕の頭を兄様は優しく撫でてくれた。
 その手があまりにも温かくて、僕は堪えていた涙を溢れさせてしまった。


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