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小説(ファンタジー)
1
 欲しいと思ったモノは何でも手に入った。
 今よりも幼かった時は、傲慢にも手に入らないモノはないと思っていた。
 でも、本当に欲しいモノは手に入らないと思い知った。
 どんなに望んでも、どんなに手を伸ばしても、手に入らないものはあるのだと。
 だって、“それ”は兄様のモノだから。
 “彼”の心も、体も、忠誠も、命も全て………。


 今日も遠目から彼の姿を目にした。
 その傍らにはとても綺麗で、僕なんかとは比べ物にならない位優秀な兄様の姿。
 兄様は次代皇帝として、民からも愛されている。
 その隣に立つ彼も、兄様の専属騎士として、また、近衛騎士団長としても素晴らしい人だ。
 お似合いのふたり。
 平凡な顔の僕では、ふたりといてもいつも浮いてばかりだった。
 そんな僕が、彼と釣り合うはずなどないのだ。
 



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