Dust box 突き刺さるトゲ(浮気×健気) それは、本当に小さな想いだった。 誰にも気づかれることなく、日陰に咲く小さな花のように、見つけられることなく枯れ果てる運命だったのに。 「お前、俺と付き合ってみる?」 それは、まるで悪魔の囁きのように甘美で、残酷な響きを持っていた。 それに誘われるように首は縦に動いていた。 遥は、部屋に戻って来た途端に聞こえてくる悲鳴のような女性の声に頭と胸が酷く痛んだ。 彼と…竜樹と遥が付き合いだして1年が経とうとしていた。 でも、付き合いだしてから半年経った頃、竜樹の浮気は始った。 それでも、遥は一度として竜樹を責めたことはなかった。 遥には分かっていたから。 竜樹に好かれていないことを。 始まりが始まりだ。 遥だって十分に理解している。 竜樹が遥と付き合ったのはただの好奇心だと。 捨てられないのは、その方が面倒がないからだと。 だから、遥は竜樹の浮気を黙って見続ける。 でも、それでも……… 「好き、なんだよ………」 今日もまた新しい棘が胸に刺さる。 END [*前へ][次へ#] [戻る] |