Dust box
籠鳥雲を恋う(国王×平凡)
窓には、鉄格子が嵌められている。
セシル・ノーランドは、ただそこから見える風景を眺める。
小さく溜め息を吐くと、セシルは部屋を見渡す。
煌びやかな部屋の中にいる着飾られた自分を認識して、セシルはまるで自分が人形になった気分だった。
「セシル」
いつの間に入って来たのか、ひとりの男がセシルに声を掛ける。
セシルはそちらを一瞥するだけで、またすぐに外に目を向けた。
だが彼はそんなセシルを抱き上げ自らの膝に乗せた。
「セシル、何か欲しい物はあるか?」
「…」
セシルは彼の言葉に答えない。
彼はそれさえも気にせず、セシルの髪を梳いたり、顔にキスを落したりと勝手にしている。
―トントン
扉がノックされる。
「失礼いたします。陛下、そろそろお時間です」
ドアの向こう側で声がかけられる。
「わかった、すぐに向かう。……ではセシル、また夜に来る」
チュッと音を立て彼はセシルの唇を奪い、セシルを自分の膝からそっと下ろすと部屋を後にした。
セシルは、彼が出て行くとまた溜め息を吐いた。
セシルには、ここでの生活があまりにも息苦しくてたまらない。
なぜ、自分がここに閉じ込められて、しかも“陛下”と呼ばれるその人に執着されているのかわからなかった。
ただ分かるのは、死ぬまで…もしかしたら死んでも自分には自由が与えれれることがないということ。
見つめた先の蒼い空の下を歩くことなどないということ、それだけだった。
END
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