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Dust box
溺愛×天然
「遥ちゃん今日もクマさんと一緒だね」
「うん!クマさん一緒なの!」
 遥は嬉しそうに両手で抱えたクマのぬいぐるみを見せる。
 そんな遥の姿に周りにいた生徒は頬を緩める。
 まるで子供を見つめる親の目だ。
 そうなるのも仕方がない。
 遥は高校生であるにも関わらず身長が145センチしかなく、声変わりもしたのかわからないボーイソプラノなのだ。しかも、いつも大きめのクマのぬいぐるみを抱えているため、本当に高校生なのか疑いたくもなるほどだ。
「遥!またぬいぐるみなんか持って来て!!学校にこんなの持って来ちゃダメなんだぞ!!」
 そこに現れた今学校を騒がせている転校生が遥のぬいぐるみを奪い取った。
「あっ!!」
「遥は平凡なんだからこんなの似合わないんだ!これは俺が預かっておくからな!」
 転校生はそう言うと、遥のぬいぐるみを抱えて走って行ってしまった。
「クマさん…」
 遥は自分の手を見つめる。
 クマが消えてしまった事実に涙を浮かべる。
「遥」
 その時、遥の名前を呼ぶ声がし、遥はそちらを向いた。
「…ゆーくん?」
「そうだよ、遥」
 ゆーくん…雄一は遥を抱き上げ微笑んだ。
「…どうしてゆーくんがいるの?」
「ん?遥が泣いているような気がしてね」
 雄一はそう告げる。
 遥は「すごいねー」と涙を引っ込め微笑む。
 だが、周りにいた生徒たちの間ではざわめきが起こっている。
「あいつって、天宮学園の…」
 周りにいた生徒は雄一を見つめる。
遥の通う東雲学園の兄弟校、天宮学園生徒会長、九条 雄一。
 その人物がそんな単純にしかもタイミング良くここに現れたことに周りは疑問を浮かべる。
 疑問を持たないのは遥だけだ。
「そうだった。遥、これ新しいぬいぐるみだよ」
「…ウサギさん?」
「うん。クマさんにもお友達は必要だろ」
「クマさんのお友達!…でも……」
 遥は今手に持っていないクマを思い出す。
「大丈夫。クマさんは後で俺が回しゅ……返してもらっておくからね」
「ありがとう、ゆーくん」
 遥はウサギのぬいぐるみを抱きしめながら雄一に笑いかけた。
 雄一は遥の頭を撫で、微笑んだ。


 その後、遥はクマのぬいぐるみを雄一の手で返してもらい、遥はクマとウサギのぬいぐるみを交互に持ち歩くようになった。
 そして、
あの転校生はいつの間にか姿を消し、彼の消息を知る者は誰もいなかった。


オマケ
遥「そう言えば、なんでゆーくんがうちの学校にいたんだろ?でも、久しぶりにゆーくんに逢えてすごく嬉しかったな。ね、クマさん、ウサギさん」

雄一「交流会のために行ったけど、まさか遥にあんなゴミが近づいてたなんてな。まあ、今後一生日の光を見ることはないか」


END

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