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Dust box
もう誰にも傷つけさせない(アンチ王道)
※病気などの表現がありますが、あくまでも作者の考えるフィクションです。ご容赦ください。



 自分でも知らない僕がいて、自分の知らないところで騒ぎを起こしているとしたら、人はそれを信じてくれるだろうか?
いや、きっと信じてなどくれないんだろう。
だって、そんな可笑しな話、信じる方も、話す方も頭が可笑しいとしか思えない。
だけど、実際にそうとしか思えないことが今この学園で起こっている。
しかも、それを起こしているのが『僕』だということ。
「謝れ!謝れば許してやるから!!」
 考えていた僕の耳元で叫ぶ彼は、今年の5月の連休明けから転入してきた転入生、名前は………忘れた。
兎に角、彼が来てすぐ、学園のアイドルたち(よく言う親衛隊持ちとかいわれる顔だけ集団)は、彼に惚れ込み(どこが良いのか僕にはわかんない)親衛隊を刺激しまくった。しかも、僕はそんな彼の同室者兼クラスメイトとなってしまったのだ。
そして、うまく親衛隊の制裁から逃げた彼の身代わりとして僕に白羽の矢がたってしまったのだ。
それからだ。
色んな奴ら(特に親衛隊のワンコ)から避けられ、時には青い顔をして逃げられるようになった。お陰で制裁はなくなったが、生徒会や転校生からは何故か声高々に攻められるようになった。
「僕はそんなことしてないって言ってるでしょ」
「いや、お前だった!俺はこの目ではっきり見たんだからな!嘘はいけないんだぞ!!」「だって、僕はその時間もう寮にいたんだよ?昨日は君たちとも行動した覚えもないし、そもそも僕に君たちを殴るだけの度胸もないよ」
「でも、あれは淳だった!嘘つくなんて最低だ!謝れ!」
何度説明しても聞きやしない。
僕にはそんなこと無理だって言ってるのに。
「いい加減にしてよ。僕は違うって言ってるだろ」
「俺は間違ってない!最低だ!」
誰も間違ってるなんて言ってないのに。
その時、顔に酷い痛みを感じた。
あぁ、殴られたんだってわかった。
その衝撃で、僕の意識はブラックアウトしてしまった………。

(視点なし)
「たっく、またお前かよ」
起き上がった淳の表情はいつもと変わらず無表情なのに、その雰囲気はまるで違った。「………淳?」
いつもはうるさい転校生も戸惑ったように目線をさ迷わせている。
「あぁ、そう言えばこっちの『俺』とはハジメマシテだったか?まぁ、関係ないか」
「何言ってるんだ、淳。可笑しいぞ!」
「簡単に言えば、俺は淳だけど淳じゃないんだよ。Do you understand ?」
淳は馬鹿にするような笑みを浮かべて転校生たちを見た。
「………二重人格と言うことですか?」
副会長が口を開く。
「YES。さすが副会長、理解が早くて助かるよ」
「では、昨日私たちを殴ったのも、親衛隊たちを返り討ちにしたのも君だと言うことですか?」
「その通りだよ。まぁ、淳本人に自覚も記憶もないけどな」
淳はどこか悲しそうな表情を一瞬浮かべたが、直ぐに表情をなくした。
「そんな嘘吐いちゃいけないんだぞ!!皆を騙して!謝れ、淳!!」
 復活した転校生が顔を真っ赤にして怒鳴り始めた。
「…うるせーよ」
 淳は転校生の顔ぎりぎりを殴りきる。
 転校生は赤から青に顔色を変化させる。
「黙ってろ。お前の身勝手さのせいで淳はストレス感じてんだよ。そもそも、淳が何したって言うんだよ。ただお前に振り回されているだけで嫌味言われて、制裁されそうになって………でもさ、お前も、他の奴らも全員、いらねーよ」
 淳は暗い頬笑みを浮かべる。
 誰もが、この後おこることが分かっているはずなのに、逃げられない。
 冷たいその微笑みにの中に浮かぶ、悲しみを浮かばせたその瞳に囚われた。


 淳が目を覚ますと、そこは実家のベッドの上だった。
 なんで、自分がそこにいるのか分からない。
 でも、鏡に映る自分の姿に何故か涙が溢れてきた。
「…ありがとう」
 意味も分からず零れ出る。
鏡の中の自分が笑ったような、そんな気がした。

END
(もう、誰にも君を傷つけさせない。君は俺が守るから。だから、どうか笑って)



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