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Dust box
一番はひとりだけ(浮気×諦め?)
 目の前で繰り広げられる修羅場という名の茶番劇にいい加減飽き飽きしている二葉は、思考を今日の夕飯にシフトチェンジしかけていた。
 そもそもの原因は二葉の恋人である陽一の病気、『浮気』である。
 浮気は病気、治らないと諦めている二葉にはそのこと自体にはもう何の関心も感情もないのだが、その度に起こる修羅場にはできれば関わりたくないと思っている。
 今日は、久しぶりに陽一とデート中にギャル系の女とはち合わせた。それだけなら、まだマシだった。
 そこに、清楚系お嬢様な女まで登場し、その浮気相手同士、どっちが本妻(?)なのか、争い始めてしまったのだ。
 周りがひくほどの罵声が飛び交う中、当の本人であるはずの陽一は他人事のようにそれを眺めている。
「…止めなくていいの?」
 二葉は仕方ないというように陽一に問いかける。
「うん。愛人の喧嘩なんて興味もないよ」
 陽一ははっきりとそう告げた。
 二葉は、大きくため息をつく。
「でも、二葉が見たくないって言うなら止めないこともないよ」
 どこか嬉しそうに告げる陽一に頭痛さえ感じる。
「なら、早く止めて。じゃないと先に帰るから」
「…まだ、デートの途中だよ?」
「このままじゃそれどころじゃないし…」
「…わかった。ちょっと待ってて」
 陽一はそう言うとふたりの間に入った。
「陽一さん、私が貴方の彼女だとこの方にはっきり言って下さい」
「陽君、あたしが彼女だよね?」
 ふたりの女性に挟まれた陽一は、常とは違う無表情でふたりを見た。
「そもそも、君たちとは付き合ってすらいないんだけど。それに、俺は二葉一筋だから。だいたいさ、愛人がなに本妻気取ってんの?せっかくの二葉とのデートも邪魔してくれてさ、いい加減にしろよ」
 冷たい氷のような目がふたりを貫く。
「だ、だって、私を好きだと言ったじゃないですか」
「あたしのことだって…」
「『好き』なんて、俺、誰にだって言うよ。だって、少しでも好意があったら好きだって言っていいじゃない。それに、俺が一言でも君たちを『彼女』とか『恋人』とかって言ったことある?ましてや『愛してる』なんて言ってないだろ?」
 陽一はただ淡々とそう騒いでいた彼女たちに告げた。
 ふたりは口を噤み呆然としてしまっている。
「わかってくれた?今日はせっかくの二葉とのデートなんだったのに、君らのせいで台無しだよ。二葉が本当に帰ったらどうしてくれるのさ。君らと二葉じゃ元々の価値が違うんだよ」
 止めをさすように告げると、陽一は満足そうに微笑み、二葉の元に戻った。
「さあ、デートの続きをしよう。確か、新しい服が欲しいんだよね。俺が二葉をコーディネートしてあげるから」
 陽一はその場にふたりを放置し、二葉の手をとって歩き出してしまう。
 二葉は、その手を振り払うことなく、それに続いた。
「ねえ、二葉」
「なに?」
「『愛してるよ』」
 急に告げられた愛の言葉に二葉は微笑んだ。
「知ってるよ」
 

 浮気は病気治らない。でも、唯一を与えられるならそれでいい。


END


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あきゅろす。
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