企画・記念 恋人たちのクリスマス 「………はぁ」 自然と出てしまったため息は、自身が思ったよりも重たかった。 クリスマスだと言うのに講義がしっかりと入っているのだ。どう考えても文科省の趣味としか思えない。 クリスマスは家族や恋人のためのものだと思うのだが、もう仕方がない。 本当は今日は恋人である満月(みつき)と過ごすはずだった。 翔は再び大きく溜め息を吐くと、教授の言葉を左から右と流したのだった。 6時間目まできっちりと講義に出た後、重い足取りで自らのマンションへと帰宅した。 しかし、鍵を開けようとしたのだが、すでに鍵は開いている状態だった。 不思議に思いながらもドアを開くと部屋の電気もついていた。 さらに、部屋の中からパタパタといった足音が聞こえてきた。 「おかえりなさい」 その時、部屋の奥から現れたのは、今日はもう会えないと思っていた恋人だった。 「た…だいま…」 翔はまさか満月がいるとは思ってなくて驚きを隠せない。 「翔、今日講義で遅いって言ってたから、どうしても一緒に過ごしたくてご飯作って待ってたんだ」 満月は笑顔で告げる。 しかし、翔の反応がないことに不安そうに顔を歪める。 「…迷惑、だった?」 「迷惑なんかじゃない。すごく嬉しい。ありがと、満月」 翔は心からの感謝を口にした。 「良かった」 満月は不安げな表情からいつものふんわりとした笑みを浮かべた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |