企画・記念 10 転校生と何故か一緒にいたくなくてまっすぐに寮の部屋に戻った。 少しだけ、本当に少しだけ匂いがしたんだ。 大好きな匂い。 いつもこの部屋にあった匂いが。 リビングの方に行くと今朝はなかったものがテーブルの上に置いてあった。 この部屋の予備のカードキー。 それは、たった一人に渡していたものだった。 それを受け取った時の彼の顔は今でも思い出せるのに。 『お返しします。僕はこれを持っている資格はもうありません』 鍵と一緒に添えられた短い短いメッセージ。 全身から力が抜けた。 そして初めて気づいたんだ。 君があんなにも親衛隊と言うものに拘っていた理由を。 君が初めて嫌だと、言った理由を。 あんなにも必死な顔をした理由を。 この部屋から君がいなくなった理由を。 君にとって親衛隊であるのは唯一の理由だったんだ。資格だったんだ。 そんなことには気づかなかった。 たとえ、親衛隊がなくなったって、君が離れることはないと、君はずっと傍にいてくれるんだと思っていた。でも、それは間違いだった。 だって、もうここに、君はいない…。 [*前へ][次へ#] [戻る] |