企画・記念
9
学園に来た治樹はそのまま食堂へと向かった。
生徒たちの悲鳴を聞き流しながら生徒会専用のフロアに上がる。
そこは階下よりも騒がしかった。
「あー、どこ行ってたんだよ!!」
転校生が治樹に駆け寄る。
前だったら嬉しかったのに何故か今日は何も感じない。
「…ごめん、寝坊」
治樹はそう答えた。
「貴方が寝坊なんて珍しいですね」
副会長が驚きを見せる。
「寝坊はダメだぞ。ちゃんと起きないと!」
「うん、気を、付ける」
治樹が頷いたのに満足したのか転校生は治樹から離れた。
その時、階下が騒がしくなった。
入口のところには鈴と涙、そして昨日まで親衛隊だった者数人がいた。
鈴たちの存在に気づいた数人が席を立ち、鈴たちに譲った。
鈴は申し訳なさそうにしていたが、次の瞬間、花が咲いたような笑みをその生徒に向けた。
それを見た瞬間、治樹は座ったばかりの椅子を音を立てて立ちあがった。
「どうしたんだ、治樹?」
転校生が問いかける。
「…っ。なん、でもない」
治樹は再び席に着く。
でも、目線が鈴から離れない。
ふいに、鈴がこちらを向いた。目線がぶつかる。いつもなら、そう、いつもなら鈴は恥じたようにそして嬉しそうに笑う。そして小さく手を振るのだ。でも、今は…傷ついた表情ですぐに目線をそらした。そして何事もなかったかのように涙と会話を交わす。
どうして?
治樹は胸に小さな痛みを感じた。
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