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企画・記念
1
Side芳

 紫苑様と本当の意味で結ばれたのはつい3日前。この3日間、僕は一度も寮の部屋から出られなかった。
 …うん、察してください。
 紫苑様は勿論毎日学校に行っていました。生徒会の仕事もあるし。
 でも、毎日疲れた様子で帰って来る。
 なんでも、あの転校生くんがうるさく付き纏ってくるんだって。
 なんか、「俺の傍にいないとダメなんだぞ!」とか「俺を放っておくなんて最低だ!」とか「かまってやらなかったから拗ねてんのか!」とか………。
 毎日同じことを言ってくるらしい。しかも日に何度も…。
 紫苑様はそのせいで仕事もあまり進められなくて、閉門ぎりぎりまで帰ってこられない。
「…ただいま」
 あ、帰って来た。
「おかえりなさいませ、紫苑様」
「ダメ、やり直し」
「で、ですが…」
「芳」
 う〜…………。
「お、おかえり、しお、ん」
「ああ、ただいま、芳」
 やっと挨拶返してもらえた…。
 3日前のあの日から、紫苑様は僕が敬語を使ったり、様をつけたりすると必ずやり直しをさせる。 まあ、心の中ではまだ紫苑様なんだけど。
 「芳はもう俺の嫁なんだから」とは言って貰えるのは嬉しいけど、あまりに恐れ多い。
「ごはんできてま……できてるよ」
 危ない、危ない。
 長年すみついた癖は気をつけないと素で出てしまう。
「ああ、ありがとう、芳」
「紫苑…のためですから」
 そう言うと頭を優しく撫でてくれた。
 紫苑様が優しいのはまだ慣れないけど、すごく嬉しい。
 とても大切にしてくれているのが伝わってくるみたいなんだ。


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