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企画・記念
5
 その日、南はひとりで出掛けていた。
 本当は、皓一との約束があったのだが、待ち合わせの時間に遅刻した上にドタキャンされたからだった。
 特に目的もないが、南は色々な店をブラブラと眺めていた。ただ、皓一と行くはずだった店にだけはどうしても行くことはできなかった。
 少し、休憩をするために南はカフェに入った。
 喉を通るアイスコーヒーの苦みが少しだけ心地よい。
 ちょうど先程寄った書店で買った新刊を鞄から取りだした。
 新しい紙の匂いが落ち着く。
 ページをめくり、文字を追う。
 それからしばらく南は本に集中していた。
 すると、ふいに肩を叩かれた。
 南は顔をそちらに向けた。
「南くん、だよね?覚えてるかな?」
「えっと、確か斎さん?」
「覚えていてくれたんだ」
 斎は嬉しそうに笑った。
「買い物?」
「はい。斎さんは?」
「今日この近くで撮影があってね。ちょうどさっき終わった所。一緒してもいいかな?」
「はい」
 そう南が答えると斎は向かいの席に腰を下ろした。
 すると、店員が近づいてきた。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「アイスコーヒーをひとつ」
「かしこまりました」
 店員はそう言って離れて行く。
「そう言えば今日はひとりで来たの?」
「…はい」
 南は小さく頷いた。その表情は少し暗い。
「…もしかして、ドタキャンされちゃった?」
 斎の言葉に南は困ったように笑った。
「そっか…なら、この後一緒に出掛けない?俺もちょうど服とか見に行きたかったし」
「でも、お仕事終わったばかりですし…」
「大丈夫。気にしないで。もし南くんが迷惑じゃなければだけど」
 南はそれに小さく頷いた。それを見て斎は微笑んだ。


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あきゅろす。
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