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企画・記念
2
 その日は、どんよりと重い雲が空を覆っていた。
 南は、いつものように別の女と帰って行く皓一の姿を窓越しに眺めていた。
 前には近くに居た存在が、今ではこんなにも遠い…。
 手を伸ばしても、声を張り上げても、皓一には届きそうもない。
 この想いは、何処に持っていけば消えてくれる?
「…南」
 その時、背後から声を掛けられた。
 南が振り返ると、友人の智樹が立っていた。
「なに?」
 南は力なく笑って聞いた。
「また、あいつはお前を置いて帰ったのか?」
 智樹が南に問いかける。
「…うん」
 南は頷き、また窓の外を見た。
 ちょうど、皓一は、隣に居た女子を抱き寄せているところだった。
「南、辛いなら、我慢するなよ」
「…大丈夫だよ」
 南は智樹の顔を見ずに言った。
 智樹は、それが痛々しくて仕方がなかった。
 智樹は、唯一、南と皓一の関係を知っている存在だった。
 だからこそ、皓一の浮気姿に一番憤りを感じていた。
「…今日、家に寄ってかないか?南が気になってた本手に入ったんだ」
 智樹は、無理矢理話題を変えた。
 南は、それ以上聞いてこない智樹に感謝しながら頷いた。
 


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