企画・記念
4
陽が落ちてあたりはイルミネーションや店のライトが煌めいている。
僕らも、イルミネーションに飾られた道をゆっくり歩いて行く。
やっぱり周りはカップルが多く、時々、女性の方が紫苑様に見とれている。
でも、紫苑様はそんな視線など気にせず、僕だけを見ていてくれた。
それがすごく嬉しい。
少し前までは、まさか紫苑様とこうして出掛けることができるとは思ってなかったし、何より、もう、紫苑様の御顔を見ることも叶わないと思っていた。それはすごく悲しかったけど、仕方がないと諦めていた。
今でも、これは夢なんじゃないかと思うことがある。
僕はまだ部屋の中にいて、紫苑様とのありもしない夢を見ているんじゃないかって。
「どうした?」
「なんでもありません」
微笑んで首を横に振る。
もし、夢だとしても、構わない。
僕にとって、紫苑様といられることが何よりも幸せなのだから。
そんなことを考えていると、イルミネーションされた大きなクリスマスツリーが目に入った。
「…綺麗」
夜に見ているからだろうか。
光の粒が樹を光らせるその光景はとても綺麗だった。
「そうだな」
紫苑様もそう言ってくれた。
すると、少し離れた場所で一段とカップルが群がっている場所があった。
「あそこ、何があるんでしょう?」
「行ってみるか?」
「はい」
紫苑様と近づいて行くと、人々の中心にいる人たちの姿に僕は目を見張った。
そこでは、何組かのカップルがキ、キスをしていた。
「…ヤドリギだな」
紫苑様が呟いた。
「ヤドリギ?」
僕が聞き返すと、紫苑様の指差した先、カップルの頭の上には何か葉っぱのような物が飾られていた。
「ヤドリギの下でキスした2人は永遠に幸せになれるって言うからな」
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