企画・記念 2 「では、そんなお前に贈り物だ」 彼はそういうと、小さな小箱を取りだし、僕の手に乗せた。 「これは?」 「最近巷では聖夜に贈り物をするのが流行らしい」 リボンの掛けられた小箱を開けると、そこには百合の形を縁取ったブローチが入っていた。中央には宝石も埋め込まれていて、高価な品だというのが目に見てわかる。 「このような高価なもの、よろしいのですか?」 「お前に渡すために用意した。いらなければ捨てるだけだ」 「では…有難く頂戴いたします」 壊したり、なくしたりしたら大変だと思って、すぐにそれを箱にしまい直した。 その時、僕は気づいた。 「…申し訳ありません。私も何か御渡しするべきなのだと思うのですが、何の準備もなく…」 そう、折角陛下はこんなに素晴らしいものをくれたのに、僕は何も準備していない。 そもそも、聖夜に物を貰ったのも初めてだ。 「いい。私が勝手にやったことだ」 「…はい…」 優しい言葉まで貰ってしまい、本当に自分が不甲斐ない。 「そうです、陛下。では、来年は、ふたつ、陛下に贈り物をさせて下さい」 「ふたつ?」 「はい。今年の分と来年の分を」 「そうか。それは楽しみだ」 「1年かけて、陛下に喜ばれるようなものを探して見せます」 僕は意気込んでそう告げた。 「ああ、楽しみにしている」 そう言って笑う彼の顔を見て、僕の頭は早速何がいいか考えを巡らせた。 そういえば、こんなにも彼と話したのは初めてかもしれない。 いつもは殺伐とした国政の話や、夜伽ばかりの触れ合いだ。 これも、聖夜の贈り物だろうか。 だとしたら、もう少しだけ、こうして過ごしていたい。 そんなことを望むのは、罰あたりかな…。 僕は、気づかれないように苦笑を洩らした。 その後は、ただただいつもの変わらぬ静かな夜が過ぎるばかりだった。 END そして、その約束が果たされることはなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |