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企画・記念
1
Side王妃

 寒いと思っていたら、窓の外は雪が降っていた。
 差し出した手にそれが落ちる。
 少し冷たいけど、それもまたいい。
「何をしている」
 不意に後ろから声を掛けられた。
「雪が降っていましたので」
 向き直って見た先には、思った通りの方が立っていた。
「寒いだけだろう」
「ですが、とても趣深いです」
「趣深いか…そうかもしれないな」
 彼は僕に近づいて来られた。
「だが、これ以上窓を開けておくと体に触る」
 珍しく心配していただけたことが嬉しくて、そっと小さく微笑んだ。
「何を笑う」
「いいえ、何度もございません。陛下は今日はどのような御用でしょう。せっかくの聖夜でございますのに…」
「聖夜だからこそ、こうしてお前に会いに来たのだろう。夫婦が聖夜を共に過ごすのは義務だからな」
 彼のその言葉に、少し上昇した気持ちが下降していくのが分かる。
「お前が嫁いできてから2度目の聖夜だな」
「はい」
「お前は…………いや、何でもない」
 彼はそう言って僕から視線を外した。
 沈黙が煩わしく感じ、不意に思いついたことを口にする。
「もし、欲しいものが与えられるとしたら陛下は何を求めますか?」
「そうだな…この国の民が健やかに暮らせることか」
「陛下らしい御答えですね」
「お前なら何を求める」
「私ですか…なんでしょう。思いもつきません」
「つまらない奴だな」
 本当は、欲しいものがない訳じゃない。
 言った所で叶うはずもないとわかっているだけ。
 僕が、欲しいのは貴方の心なのだから。
 そんな浅ましいことを考えているなんて知られたくなくて嘘を吐く。


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