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企画・記念
6
「麻紀が?」
「うん。黙っててごめん」
「別にそれはいいけどさ…。俺と逢う前の話だしな」
「…ありがとう」
 麻紀は感謝の言葉を口にする。大体の奴等はそう言った過去があるというと離れて行ってしまうから。
「マキが幹部で、俺は副総長だった。でも、1年位前、マキは突然俺たちの前から姿を消した。…俺はやっぱりって思ったよ。それに安心もした。だけど、心配だった」
 ユキはそう告げた。
「何があったんだ?」
「…特に、何が合ったって訳じゃないんだ。ただ、もう我慢ができなかった、耐えられなかったんだ」
 あの頃のことは今でも大きな傷となって麻紀の心を蝕んでいた。もう1年。まだ1年。そんな直ぐに消える傷でも…想いでもない。
「マキ、正直、こんなことお前に頼んじゃいけないって分かってる。でも、頼む。ミカドに逢ってくれないか」
 ユキは麻紀に頭を下げる。
 『ミカド』その名を聞く度に麻紀の心は鈍く痛みだす。
「あいつ、ずっとマキのこと探してんだ。マキが消えてから色々あって…こんな頼みごと理不尽だって分かってる。でも、もうあんなあいつ見てらんないんだ」
 ユキは頭を下げたまま懇願する。
 麻紀は、ただ見ているだけしかできなかった。
 だって、何て言ってやればいいのか分からない。
 もし逢って、またあの目で見られたら?
 またあの言葉を投げかけられたら?
 今度こそ引導を渡されてしまったら?
 麻紀にはそんなことは耐えられない。耐えられたのならきっとあの時も側を離れたりなんかしなかった。
「…俺は詳しい事情とか知らないけど、麻紀がしたいように、後悔しないようにした方がいいと思う。少しでも心が残ってるんなら行った方がいい。しないでする後悔より、やってする後悔の方が絶対自分のためになる」
 邦明はそう言って麻紀の背中を押してくれた。
「ユキ…僕、ミカドに逢うよ。でも、今日は無理だ。少しだけ、時間、くれる?」
「ありがとう、マキ」
 ユキは1年前より大人びた笑みを見せた。
 確かに1年は傷を癒すには短い。でも、人が成長し代わるには十分な時間なのかもしれない。
 麻紀は、ユキに新しい番号とメアドを教え、必ず連絡すると約束した。そしてその日は別れた。


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