小説(現代)
3
彼の代わりとして僕は須藤様の恋人となった。親衛隊の皆は喜んでくれた。でも、彼の代わりとして過ごす日々はとても苦しかった。
須藤様は決して僕には笑っては下さらない。一緒に過ごしていても会話はあまりなく、僕の名前は絶対に呼ばなかった。
僕を抱いている時はずっと彼の名前を呼ぶ。
その声がとても優しくて、切なくて、僕はただ彼の代わりでしかないのだと思い知らされる。
そんな時だ。彼が、佐伯くんが副会長様と別れた。なんでも、副会長様が仕事であまり構ってくれないのが嫌だったらしい。また、彼の争奪戦が始まった。もちろん、須藤様もそれに加わった。
分かっていたんだ。僕は代わりでしかないことを。でも抱かれるたびに優しくなっていく須藤様に勘違いすることだってあった。好きになって欲しいと望んだこともあった。どれも、言葉にはしてはいないけど、それでも願ってしまうんだ。須藤様に愛されることを。
馬鹿だなあ。本当に馬鹿だ。
争奪戦が再び始って、須藤様が僕に逢いに来ることはなくなった。当たり前のことなのに、その事実が哀しくてしかたない。僕はもう、彼の傍で微笑む須藤様を見ていることはできそうもなかった。
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