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小説(現代)
プロローグ
 大通りの裏道を進んだ先にある少しレトロな外観のバー。中からは楽しげな少年たちの声が響いている。
 そこにまた1人、少年が扉を開ける。
「いらっしゃい」
 20代前半くらいのマスターが彼を招く。
 少年はマスターの目の前にあるカウンターの席に座った。
「今日はひとりで来たんだね、ノラ」
「うん。でも、ここに来るのは今日で最後になると思う」
 ノラと呼ばれた少年はそう告げた。
 あまりに急な話にマスターは目を見開く。
「…アイツは知ってるのか?」
「うん。だって、総長が俺のこともういらないって言ったんだもん」
 ノラはあっけらかんとまるで他人事のように告げる。
 その表情には悲しみや寂しさなんていう感情は一切感じられなかった。
「ノラはそれでいいのか?」
「何が?」
「ノラ、アイツのこと好きだったんだろ?」
「うん。だーいすき」
「なら………」
「総長ね、新しいネコを飼うんだって。今度は血統書付きのブランド物。だから野良猫はもういらないんだって」
 笑いながら告げるノラの目は表情とは裏腹に光を集めていなかった。
「ノラ…」
 マスターは心配げにノラを呼ぶ。
 だが、ノラはいつものようなふわふわとした笑みを浮かべるだけだ。
 マスターはそれ以上掛けるべき言葉が見つからなかった。
 そして、ノラの前にひとつのグラスを置く。
「餞別。…腹が空いたらいつでも帰ってこいよ。お前の好きな特製メニュー、作ってやるから」
「うん。ありがとう、マスター」
 ノラは嬉しそうに微笑んだ。
 その後は、ノラに気づいたチームメイトたちがノラを連れて行ってしまった。
 その夜、野良猫は静かに姿を消した。まるで、最初からそんな存在などいなかったように何も残すことはなく………。


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あきゅろす。
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