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小説(現代)
side郁那
今日も僕は彼の部屋でひとり彼の帰りを待っている。
僕が彼、義文さんに逢ったのは、1年前、僕が家出をしたばかりの頃だった。
公園で大きなカバンを持った僕に義文さんは優しく話しかけてくれた。
僕はそんな彼に帰る家がないこと、家には帰りたくないこと告げた。
彼はそんな怪しい僕を家に連れて来てくれた。その上、いたいだけいてもいいと言ってくれた。
僕はその時彼の腕の中で泣いてしまった。
それから3ヶ月して彼から告白されて恋人になった。
毎日が幸せだった。
なのに、最近は彼の帰りが遅い。
それに、彼の体に僕が知らないキスマークがついている日があった。
気付かない振りを続けてるけど、独りだとどうしても泣いてしまう。
「早く…帰って来て…」
僕の声が静かな部屋に響いた。


その日は、義文さんが早く帰って来ると言っていた。
僕はバイト帰りに買い物をして夕飯を作りながら義文さんの帰りを待っていた。
その時ケータイがなった。
「もしもし?」
『郁那か?悪い今日急に帰れなくなったんだ。悪いけど戸締まりよろしくな』
義文さんはそうとだけ言うと電話をきった。
でも、僕は電話がきれる瞬間彼を呼ぶ女の人の声を聞いてしまった。
ケータイが床に落ちる。もう立っていることもできなくて、僕は座り込んだ。
涙が止らない。
ねぇ、僕のことがもう嫌いですか。
僕なんかもう要りませんか。
哀しくて、辛くて、気付いたら朝になっていた。
もう疲れてしまった。
僕は荷物をまとめた。
彼の優しさに縋ってい訳にもいかない。
いき場のない僕を彼は捨てることなんてできないから。
一年前、持って来たものだけをカバンに詰めて、ケータイとカギはポストにいれた。
僕は、彼に何も言わずに別れを決めた。



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