小説(現代) 15 「もう、よそ見なんてしない。我慢もさせない。これからは望だけだ。だから、もう一度、お前の傍に居させてくれるか。お前を、愛させてくれ」 涼は、まっすぐに望を見つめる。 「…俺、きっと我が儘だよ。涼が嫌になるかも知れない」 「望の我が儘くらい全部受け止める」 「…泣いて困らせるかも知れない…」 「そしたら俺が何度でも拭うよ」 望の心配や不安を払拭させるように涼は何度でも答える。 「…そんな、俺でもいいの?」 「望だから、いいんだよ。他の誰でもなく、望だから好きなんだ。俺こそ、こんな最低な奴だけど、いいのか?」 「…涼じゃないと、嫌だ」 そう言って、望は自ら涼に抱きついた。 「もう、絶対に間違えないから」 「うん、うん…」 望は泣きながら何度も頷いた。 ふたりは、それからしばらくの間、そのままでいた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |