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小説(現代)
5
次の日、望はいつもと変わらない様子で学校に来ていた。
 ただ、目は少しばかり腫れている。
 大きくため息を吐くと、後ろから頭を軽く小突かれた。
「おはよ、望。なんか不幸を背負ってんな」
 友基は明るく望をからかってくる。
「うるさいな………」
 もっと軽く流したかったが、望の口から出たのはあまりにも覇気のない声だった。
「何か、あったのか?」
 付き合いが長いだけあって友基はそんな望の変化に敏感に反応した。
 望は苦笑するだけで何も言わない。
 そんな姿が逆に痛々しく感じてしまう。
 元凶を知っているがゆえに友基はそれ以上にも聞けない。望が何か行動を起こすまで手を出さないと決めていたから。
 望もそんな友基に少なからず救われていた。
 どうすればいいのかはわかっている。
 でも、自分がどうしたいのかはまだわからない。
 だから、こうしてただ察してくれる存在に救われているんだ。
「…よし、今日の放課後はカラオケ行くぞ」
「なんで急に…」
「歌って叫べば少しはスカッとするだろ」
「そう言って、本当は行きたいだけだろ」
「まあ、そう言うなって。な、いいだろ?」
 軽いノリで誘う友基に、少しだけ笑って頷いた。
 ほんのちょっとだけ、心が晴れた気がした。

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