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7、side会長


「おい‥」

あいつの名前を呼ぼうと思って今更ながら、なんと呼ぶべきか迷う。

風紀委員長はあれだし、そもそもこいつの名前って何だっけ。

下は一馬だ。
クラスでよく中沢が呼んでいる。
でもいきなり一馬って言うのも馴れ馴れしいよな。
だいたいこいつだって俺のこと会長って呼ぶし。
けど風紀委員長って長い上に呼びづらい。委員長だと学級委員長とかぶる。


「おい?」

しょうがないので名前を呼ぶのは諦めて近付いて肩を叩くと、あいつが振り返った。

その目はゾッとするほど冷たい。


「お前、それ‥」

「ああ。悪い。救急箱かと思って開けちまった」


風紀委員長の手には俺のお気に入りの玩具を入れている箱の蓋があった。
ヤバイ。
そういや寝室はいいだろうと思って片付けてなかった。
これじゃあせっかく部屋中をピカピカに磨きあげた意味がない。

とっさに、箱の中に何が入っているか思い出そうとして止める。

そんなことしても無駄だ。


「お前もこういうの使うんだな」


風紀委員は楽しげな口調でそう言った。
だが、その目はちっとも笑っていない。


「別にお前には関係ないだろ」


俺はなんだか怖くなって一歩後ろに下がった。

こいつとはこれまで散々にらみ合いだの、ときには取っ組み合いだのしてきた。
それなのに、こいつのことを恐ろしいと思うのはこれが初めてだ。


「親衛隊のやつらに使うのか?」

「だからお前には関係ない」


だが、多分これがこいつの本質だ。
全校生徒たちから恐れらる風紀委員長は俺相手のときは、ずいぶんと手加減してくれていたらしい。
知らなかったとはいえ、俺はこいつに殴りかかろうとしたことさえある。
あのとき止めてくれた書記の佐野、ありがとう。
殴り合いじゃ、俺絶対に勝てねえな。
いつもさっさと喋れよ面倒くさいとか思ってて悪かった。


「確かに関係ないわな」

「ああ」


もちろんそれは自分で使う用だし、俺は親衛隊のやつどころかこの学園では誰とも関係を持ったことなどない。
だが、そんなことをこいつに教えてやる義理はない。

俺はもう一歩下がろうと、目線だけで後ろを確認した。


その一瞬の隙をついて、やつは俺の腕をつかんで勢いよくベットに投げ飛ばした。


「関係ないんだけどな、なんか腹立つんだわ。てことで、俺にこれの使い方教えてくんない?」





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