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5、side会長


「お前、友達いないだろ」

いつものように適当に本を選んでやっていた俺は、風紀委員長の言葉に首を傾げた。


「なんでそう思うんだ」


生徒会と風紀委員の仕事は原則日曜日は休みだ。
これが体育祭などのイベントごとの前になると話は別だが、基本的には俺の休日は暇だった。

一部の生徒たちは外出許可を貰って近くの、といってもバスで1時間ほどかかるのだが、その街に出掛けているらしい。


「毎週ここにいるからな。誰かと出かけたりしないのか?」

「あいにくと、学園の中だけじゃなくて、外にも友達なんていないからな。」


会長になる前は、外泊許可を取って、土曜から泊まりがけで少し離れた街に遊びに行っていたが、今は土曜の夕方に定例会議がある。

第一週目は委員会、二週目は体育系の部活、三週目は文化系の部活から活動報告をしてもらい、最後の週に全員で会議をする。
もちろん議長である俺は全ての会議に参加する。

学園の寮は外泊届けを出せば、生徒の外泊は許可されているが、門を閉める夕方の6時までには寮を出なければいけないという規則だ。
帰りもまた6時までに寮に戻って来なければいけない。


俺がよく行っていた街は、学園からバスを乗りついで4時間近くかかる。
日曜の朝に寮をでて、往復で8時間かかるとすると、向こうにいられる時間は僅かだ。

かといって、学園で顔が広く知られている以上、生徒たちがうろうろしているところで男あさりをするわけにもいかない。

タチで遊び人な会長様というイメージに飽々してはいるものの、俺は自分からわざわざそのイメージを崩すつもりはない。

俺が人気投票で会長に選ばれたのも、そのイメージとやらのおかげだろうしな。
俺が出場権をもつ生徒会の選挙はあと一回ある。
そこで選挙に落ちては、何のために今まで堪えてきたのかわからない。


「さみしいやつだな」

「そういうお前だっていつもここにいるだろうが」

「俺は桔梗が空手部の練習があるっていうから誘わないだけだ。慎一郎と二人で出掛けるのも、なんか違うしな」


そう言うと、やつは寂しそうに笑った。
最近こいつは俺に中沢の話をするようになった。
そのほとんどは、中沢がいかにかわいいかと言うことだが、今のように愚痴のようなものを溢すこともある。

どうもこいつは、かわいがってきた中沢に独り立ちされるのが寂しいらしい。


「まあ、大会が終われば、少しは遊ぶ時間もできるだろ。ほら、今日はこれだ」

「‥これ前に読んだ作者のやつか?」

「ああ。気に入ったって言ってただろ?」

「まあな。この作者のやつ他にはないのか?」

「図書館にあるのはこれだけだな」


俺の言葉にそうかと呟いた風紀委員長は少し残念そうだ。
俺とこいつは結構好みが似ているらしい。
となると考えることは同じだ。


「図書館にはないが、俺が個人的に何冊か持ってるから貸してやろうか?」


少し前の俺もこの作者を気に入って、ネットで大人買いをした。

読みたい本があれば、司書のお兄さんに言えば数少ない常連のよしみで購入してくれるが、なにせ時間がかかる。

そのため、本当に欲しい本は自分で買うようにしている。


「いいのか?」

「嫌だったら言うわけないだろ」

「どうしてお前はそういう言い方しかできないんだよ。俺が初めにお前に喧嘩ふっかけたのも、多分そのせいだぞ」

「安心しろ。別にお前だけ特別な訳じゃない。俺は誰にでもこうだ」


俺が自信満々にそういうと、やつはわざとらしくため息をついた。
そういうところはお前も充分嫌味だぞ。


「まあいい。じゃあ食事の前に、‥そうだな、7時ぐらいに部屋に行っていいか?」

「ああ」

「そんときに前に言ってたCD持ってくわ」

「ああ」


こいつと俺はよくにている。
趣味だけじゃない。
話してみると、以外とこいつの考え方には共感できた。

だから一緒にいても楽でいい。

年上好きの俺が同世代のやつにこんな感情をもつなんて珍しい。


「じゃあまた7時に」

やつはそう言ってカウンターに向かった。

残された俺は一人テーブルに座って本を開いた。




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