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1、side会長
うすぐらい部屋に乱れた息が響く。
「もうこんなにしてんの?ベタベタじゃん」
「あっ、アア!」
「お尻気持ちいい?」
「ぅ、あ‥いいっ。気持ちいい!」
男は涙を浮かべながら頭を振る青年の尻を軽く叩いた。
「玩具だけで満足?もっとあったかいの入れる?」
「んぁ、‥欲しい。チンコ入れて」
「じゃあ、体勢変えようか。後ろ向いて」
男にそう言われて、青年は震える身体を反転させた。
腰を上げた青年が熱いため息をつく。
その引き締まった腰に手を添えた男も、興奮で息をあらげている。
「あっ!」
男は青年の尻から細身のバイブを抜き取ると、己の起立をそこに押し当てた。
そしてーー。
「会長、なに見てるんですか?」
昼休みの賑やかな教室で、となりの席のクラスメイトに突然そう訪ねられて、俺は両耳に着けていたイヤホンを外した。
ついでにその時一時停止ボタンを押すふりをして、別の動画を再生させる。
「イタリア語のニュースだ」
「へー。そうなんですか」
まあ、嘘だよな。
普通にゲイ動画みてましたよ。
けどそんなこと言うわけないし。
「会長って、イタリア語話せるんですね。すごいです!」
感心したようにそう言って頬を染めるクラスメイトは、文句なしにかわいらしい顔立ちをしている。
たしかこいつは、うちの学園でも一二を争う美少年だ。
名前は‥中野だったか。
中野に満面の笑みを向けられる俺を、何人かのクラスメイトが羨ましげに見ている。
逆に俺に話しかける中野に嫉妬の眼差しを向けるクラスメイトも少なくはない。
それでも誰も邪魔しに来たり、悪口を言ったりしないのは、中野が人気者だからか、それともこの後の展開を予想しているのか。
多分後者だろうな。
クラス中が固唾を飲んで俺たちのやり取りをみつめている。
「それで?」
「えっ」
「俺に話しかけた理由はそれだけか?それなら無駄な時間は使いたくないんだが」
暗にお前と話すほど暇じゃないと言った俺の言葉にショックを受けた中野が、その大きな瞳に涙を浮かべる。
すげえな。睫毛長げえから、きれいに涙がたまっている。
「さすが会長様。中沢でも駄目かよ。もったいねぇ!俺、白の天使に見つめられるだけでドキドキすんのに」
「いいきみだよ。抜け駆けしようとするから」
「自分ならいけると思ったんじゃないの?」
そうだ。思い出した。
こいつは風紀委員の白の天使こと、中沢桔梗だ。
かわいくて、純粋な天使サマ。
あの生け簀かない風紀委員長の大のお気に入り。
「もういいか?」
「あっ。ご、ごめんなさい」
実際に近くでじっくり見るのは始めてだが、たしかに天使みたいな顔をしている。
黒いさらさらの髪に、同じ色の大きな瞳。
唇はぷっくりとしていて、一見すると女の子のようだ。
まあ、俺は実際に天使なんて見たことないし、死んでからも見る予定はないんだが。
だってそうだろ?
こんな美少年が自分の手を握りしめながら精一杯の勇気を振り絞って話しかけてきたのに、そんなことよりさっきの動画の続きが気になってしかたないんだから。
俺が神様だったら、かわいいこを泣かせたやつはみんな地獄に落とすな。
俺の拒絶の言葉を皮切りに、一瞬静まり返っていた教室もうるさくなってきた。
もう中沢と話すことはないので、イヤホンをつける。
中野改め中沢はキメの細かい白い肌を真っ青にさせて席に戻った。
といってもすぐ隣なんだが。
これは席替えするまでちょっと面倒くさいな。
そんなことを考えながら、今度は本当にイタリア語のニュースを見る。
今日の教室でAVを見るというセルプレイはもう終わりだ。
なかなかスリリングでドキドキしたが、中野のせいで萎えた。
あー、つまんねぇ。
なんで俺こんな閉鎖的な男子校なんか来たんだろう。
新しい彼氏も出来ないし、それどころか俺様キャラなんて不名誉な称号をもらったせいで、ろくに友達すらできない。
あーあ。どうせなら俺も中野みたいに誰からも愛されるかわいい顔に生まれたかった。
そうすれば男を選り取りみどりだったのに。
セフレいっぱいつくって毎日日替わりで遊べるし、夢の3Pだってできたはずだ。
いや、俺だってつくろうと思えば美少年のハーレムの一つや二つ、簡単に作れるんだけどな。
だって俺抱かれたいランキング1位だし。
でも、俺が欲しいのはそういうのじゃない。
「あー。誰かマジで俺のことメチャクチャに犯してくれないかなー。」
俺の小さな呟きは教室ざわめきの中に消えた。
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