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『続』八丁堀の七人
  第一巻 サイドストーリー集
嘘と欲と 女与力の怒りの鉄槌E

高山の一件から一週間後。

北町奉行所にて高山の吟味が行われた。

これには青山、佐々岡も立ち会った。

それだけではなく女達の代表としてお初とおかえ、子を宿した女の三人も立ち会い、高山の両親も呼ばれた。


「こりゃあお取り潰しもあるかもしれねぇなあ」


「それは困る。責任を取り終えるまで逃げずにきっちりやってもらわなくちゃ」


「厳しいねぇおめぇさんは」


しばらくすると吟味方与力が現れ吟味が始まる。


「口上書、吟味方にも渡してあるのかい」


「勿論。こちらの要望も伝えてあるから後はそれをどこまで吟味方とお奉行が汲んでくれるかだな」


「しっかりしてるねぇ。相変わらず」


吟味方が罪状を読み上げる。


そして女達一人一人に話を聞いていく。




この前あれだけ言ったにも関わらず喋り出すと止まらない。

やはり心の傷は癒されないのだろう。

囮とはいえあの恐怖を味わった佐々岡には痛いほど気持ちがわかった。





「高山朔之心、お前が名乗ったのは北町奉行所定廻りの者達の名で間違いないな」


吟味方が聞くと高山が一言はいと頷く。



「北町奉行所与力青山久蔵、下手人の話に偽りはないな?」




「……おい佐々岡……」





「ほら、時間取らせるんじゃないよ」


言われて青山は仕方なく話し出す。


「下手人の言う通り与力、定廻り同心の名を語っており、女達にも確認が終わっております」


「うむ。では罪状通りで間違いないな?高山」




「……はい」



高山が認めた。


その横でお初達がもの凄い形相で睨みつけている。




「……おい佐々岡、おめぇ口上書おいらの名前で出したな?」


青山が佐々岡に聞く。

突然の話で相当慌てたようだ。

「当たり前だろ。お前が監督してるんだから」


佐々岡が軽く微笑んで言う。


「まぁ女は男を立てるもんだ」


「……こんなところで立てるなって」


ふふっと佐々岡は笑った。




話してる間にも白州では吟味がどんどん進んでいく。









詰め所では八兵衛達が仕事をしながら裁きの内容について話していた。


「今回は内容が内容だけに、かなり厳しいお裁きになるだろうね」


孫が楊枝を作りながら呟く。


「死罪まではいかねえだろうが相当な覚悟はしといた方がいいだろうな」


磯貝が茶を飲みながら答える。


「殺し、火付け、盗賊、博打…これだけはって言うけど、罪に優劣もないし、あえて言うなら殺しよりも酷い気がしますけどね」


源吾が調べ書きを書きながら言う。


「源吾さん珍しいじゃないですか。まともな事言うなんて」


「失礼だなぁ兵助。俺はいつも真面目なの!」


「いつも飲み過ぎて二日酔いで来たり、見張り中に居眠りしたり、女ばかり追いかけたり……どこが真面目なんですか」


「一郎太まで言うなよぉ。お前みたいに真面目にかっちりやってるとどこかで疲れちゃうの!少しくらい力を抜かないと続かなくなるんだよ」


「おめぇは力抜きすぎなんだよ。抜きすぎて昼行灯になってどうすんだ」

源吾の頭をひっぱたきながら磯貝が言う。


「磯貝さんだってさぼってる時あるでしょ!見張りしてるように見せかけて役得ばかり貰ってるくせに」


「馬鹿いえ!ちゃんと見張りしてるに決まってるじゃないか!あれは、向こうが気持ちでくれるもんだからいいんだよ。それに源吾、お前も貰ってるじゃないか」


「磯貝さんだけなんて卑怯でしょ。だから私にもわけてもらうんです!」


「……五十歩百歩だと思いますけどね」


兵助がちらりと呟く。


「おぅ兵助なんか言ったか!」


「いえ、何も」


磯貝の問いにそっぽを向いて答える。





そんな話をしていると青山と佐々岡が高山の吟味から帰ってきた。




「青山様、佐々岡様お帰りなさいませ」


「高山の裁きはどうなりましたか」


磯貝が挨拶すると八兵衛が続いて二人に聞いた。


「高山家は縁座とし女達への全責任を負い、奉行所監督の元それを果たすこと。高山朔之心は役儀取り上げとし、以後役は与えず、また蟄居とする。…だそうだ」


八兵衛の質問に青山が答える。


「お取り潰しにはならなかったんですね」


「ああ。それでは逆に逃げられてしまうからな。責任はきっちり取らせないと」


八兵衛の質問に今度は佐々岡が答える。

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