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七日の恋


短くも、それは美しい恋でした。


夏の花が凛々しく咲き乱れ、あれよあれよと木陰の隅。黒い命が咲きました。
嗚呼、短き命はその空に悲しくくしくも恋をしました。
小さい体に思いを溜めて。


彼は私に会うといつも言います。それは彼にとっての独り言。
私は彼の風物詩。
嗚呼、夏だな。


齢1日の短き命。一生貴方を見ていたい。
小さい体に思いを溜めた
鳴かず貴方に届かぬまま。


少し火照ったその顔は私を見るといつも言います。それは彼にとっての軽蔑の言。
私は彼のただの物。
まだ、居たのか。


夏の花が廃れる中、あれよあれよと樹柱の側。黒い命は思います。
嗚呼、なぜに私は恋をしたのか。あの笑みが美しいからだ。
小さい体に思いをはせて。


なんで、なんで私には言葉を乗せる唇が無いのでしょう。
なんで私には貴方を抱く広い体が無いのでしょう。
でも、でも、私は貴方を思う心が有ります。
それが恋と言わぬなら、なにが恋と言うのでしょう。


余命1日の短き命。一生貴方にさようなら。
嗚呼、貴方が好きですと
小さな声で、鳴いてみた。


夕焼けで染まったその影は私の骸を見て言いました。それは彼にとっての感謝の言。
私は彼の何ですか。
愛してくれて、ありがとう。


淡く、儚い、7日間。
短くも、その美しい恋は・・・・・・。


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あきゅろす。
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