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全て嘘であって欲しくて
朝の朝礼の時間、元就以外の全員が顔に驚愕の色を浮かばせた。ある者は泣き、ある者は含み笑いをしまたある者は驚きを隠せないでいた。それを元就は一瞥し、大きな声で吐き捨てた。
「我、毛利元就は今以って家督を毛利隆元に譲る。」
「そんなっ、父上!!」
一番にその言葉に反抗を見せたのは元就の実の息子、毛利隆元だった。隆元は思いのままに意見を述べた。
「なぜに、こんないきなりっ・・・・」
「我は昨夜、足を痛めてな・・・、そろそろ家督も譲ろうと思っていた。丁度いいから今日その事を言っただけだが」
足を痛めたというのはあながち嘘ではない。しかし、家督の話は嘘だった。隆元が少し戦に慣れてからにしようと思っていたが、もうこの足では戦場で駆ける事はできないだろう。歩く事もできないかもしれない。もし腱がやられているかと思うと寒気が走る。その事を述べた時の隆元の顔は一生元就についてまわるだろう。言わないが。昨夜は本当に酷かった。自分の予想に反する行動をする者がいたなんて吃驚するが、元就とてやられてそのままな訳がない。元就は人ごみの中から昨日の忌まわしい顔を見つけた。そして手持ちの采配で違反者を指した。
「あと、その者を殺せ。違反者だ。・・・・命令だ。」
元就は自身の力で違反者の企みをねじ伏せた。元就の足の怪我と違反者を繋ぎ合わせ命令された者は静かに頷いた。誰もが元就の言葉は嘘だと分かった。いままで泣いていた隆元でさえもその事実に気ずいたくらい、元就の命令は稀だった。皆の考えが一致した時、その逆に違反者は焦っていた。今までの含み笑いの欠片もないくらい違反者の顔には驚きと怨みで吹き出た汗でいっぱいになっていた。汗が滝の様に流れる。元就はその顔を見て、内心笑っていた。元就は歩けなくなっても実権は誰にも渡さないつもりでいた。だから邪魔で憎たらしい違反者をこの手で、潰した。違反者はそのまま四つん這いになりながらも必死になって逃げようとした。それを近くに居た兵が取り押さえる。その兵は昔の違反者の兵だった。違反者はそれに激怒して大声で涎を垂らしながら叫んだ。
「おいっ、おめぇら全員クビだクビっ!!!自害しろぉぉぉぉ!!!!」
違反者を取り押さえていた兵はまるで蛆虫でも見るような目で静かに言った。
「煩い、下種が」
その言葉で違反者は大人しくなった。この安芸の兵は違反を許さない。例え一秒前まで自分の上司だったとしても違反をしたらその場で、その者は家畜以下になる。全ては己の君主の為に。殿の命令は絶対なのだ。そのまま兵は違反者を引きづりながら元就の前に立った。そして違反者を跪かせ、退いた。
「うむ、」
違反者は己の下でカタカタと肩を揺らしていた。元就はそれを無表情で一瞥し、そして輪刀を取り出した。そして違反者の首へ当てる。違反者はヒッと家畜じみた悲鳴を上げた。元就は誰にも聞こえない様に小さい声で呟いた。
「苦しんで死ね、腑抜けが。」
そして首に当てていた輪刀を深く刺し切り裂いた。
「ぐががががあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!」
首を撥ねずにあえて切り裂いた。その方がより苦しんで死ぬからだ。我ながら凄い性格が悪いと思う。しかし、それくらいに元就はプライドを傷つけられたのだ。これ位は当然だ。暫く首から血が溢れていたが、少ししたらどんどん出る量が少なくなって来た。それと同時に叫び声が薄い息へと変わっていく。最後にはカハッと小さい吐血をして逝った。元就はそれを見届け、静かに言った。
「おい、ゴミを捨てろ。」
「はい」
近くにいた兵は違反者の亡骸を持ち遠くへ行った。
「では、今日はこれにて解散する。」
兵達はそのまま自分達の配置へついていった。


 元就は自室へ戻り一息ついた。ふと足を見てみると白い足に白い包帯が巻いてある。しかし、その包帯も赤く染まっていた。包帯を取り替えようと剥がす。包帯を剥いだそこには、化膿して膿ができてぐちゃぐちゃになった傷口が出てきた。もうこの状態では腱は切れているだろう。
「もう、刀を交わる事は無いだろう。決着も着けぬままか・・・・・」
そう考えたら涙線が緩くなった。その言葉を合図に涙が溢れてくる。けれど声を出して泣くなんて事は元就には出来ない。元就は声を殺しながら静かに、泣いた。

              
           (全て嘘であって欲しくて)




終わりました〜!!第二部完結っ、嬉しいです。就ちゃんの性格が酷い・・・・・・。次には、ついに
親ちゃんが出ます!!元就の隠居を知った長曾我部の行動を好御期待☆っです!!


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