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狂椿
貴方は言います
「冬ですね。」
と。私を横目に見つめながら

散りゆく秋にさよならを言い茶色い葉に白い雪がかかります
積もり積もった雪景色 紅い蕾が顔を出します
夢々これは地に落ちた鮮血の様だと酷い喩えをまみえながら私と貴方は出会いました
いつも正しい刻に詩を綴り、麗しいその瞳で私を見つめながら
「今日も憎たらしい紅が栄えますね」
投げ掛けられる喩えは貴方の前では飾りの様
多分私は狂わしいほど貴方を愛しているのでしょう

嗚呼早く散ってほしい
哀しい位に栄えるその紅は一人で儚げに咲いている
誰にも愛されないのに 誰にも疎まれるのに
なぜ咲いている?

甘い接物は好ましくありません
貴方の様な錆び付いた心が私を酔わせます
ですからせめて私が狂うまで御傍に居たいのです
しかし私は良くありません ですから
私を消して下さい

縁起の悪い華は嫌いです
存在を気づいて貰えないのに健気に咲いている
けれど哀しみに溺れて散っていく
自ら首を落として誰にも見止められずに
なぜ生きていた?

何時しか貴方は狂いだした
遠くで見つめる私に気づかずに只一人の名前を叫びながら
彼女は麗しい貴方を残して此の世を去った
嗚呼なんで、なんで貴方は私を見止めてくれないのですか
私は貴方をこんなにも愛しているのに
出来るなら貴方と一緒に逝きたかった
もう、さよならです

一つの華が散った
思いにはせて身が爆ぜるまで
せめて最後は、と思いながら
一つの風物詩として散っていった
こんなになるなら人を愛さなければ良かったのに
儚げで哀しくて美しい華

雪解けと供に全てが終わった
貴方は老いて縁側で御茶を飲んでいた
見つめる先には美しい華があった
貴方は言います
「今度は供に逝きましょう。」
と。今年も白い雪の中に紅い華が咲きました


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