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魔法骨董店。
仕入れたモノ。



カラン……


「いっ、いらっしゃいましぇえ!!」
「いちいち噛んでんじゃねぇダメツナが」
「ぅあ゛!!?」
「じゅ、十代目!!」


上記発言の内二つは綱吉、一つはリボーン、そしてもう一つは今店内に足を踏み入れたばかりの人物────────獄寺隼人である。
獄寺はあわてて綱吉の元へ駆け寄り、リボーンのホウキの一殴りによって前のめりに素っ転んだ彼を支え、立ち上がるのを手伝った。


「つつつつ……へぁ?獄寺君?」
「ただ今戻りましたっ!十代目、大丈夫っすか?」
「あ、うん……」


少しどもりながらも返事をする綱吉。
と同時に、入って来た客が獄寺で良かったと、胸を撫で下ろす。
もし客だったらどうだ。入店直後にボンバーヘッドの茶髪少年が恐らく挨拶をしているのだろうがなんだか良く分からない事を突然口走り、それをホウキに乗った赤ん坊が殴る光景を突然脳内に情報として放り込まれる事になる。




獄寺君がこの光景に慣れててよかったぁ………




心の底からそう思う。本当に。

綱吉が脳内で思考を繰り広げていると、現実世界ではリボーンが口を開いていた。


「おい獄寺。今回はどんなの仕入れて来たんだ」
「リボーンさん!今回はっすね、スンゲーもん見つかったんすよ!」


得意げな笑顔を見せる獄寺。
綱吉は、彼が店に入る時脇に抱え、自分を支えた時には床に置いたダンボール箱に目をやった。
中には、今回獄寺が仕入れて来た品物が入っている。

獄寺はボンゴレ魔法骨董店の仕入れ係兼、自称「十代目の右腕」である。
いつも世界各地を回り珍しい骨董品を集めているので、ほとんど店にはいない。
実はスラム出身と言う意外なバックグラウンドだが、良い品を見極める目は確か。
色素の薄めな銀色の髪と、それに習う様に同じ色に輝く瞳。集中力が増すと翡翠色に輝く事もあるが、それはとても珍しい事だ。

ニコニコ笑いながら、足下に置いてあったダンボール箱を解体する獄寺。
綱吉は、中からチラっと覗いた金色に一瞬目を見開いた。
そして同時に、チクタクと言う機械音も聞こえて来る。


「どうっすか、十代目!」
「…!わぁ、綺麗…!!」


箱から出て来たモノの美しさに、思わず見入ってしまう。

金色に装飾された八つの角と、それと同様にチクタクと言う音と連動しながら輝き、揺れ動くペンドラム。
見た目からして柳で出来ているらしい本体と、まさに『アンティーク』と言える様に先端が渦を巻く様なデザインの針。
全てが繊細で、全てが考慮された上で彫り込まれた模様だと言う事が、見ているだけで分かった。


「!!おい獄寺、これ、『サクラ』か?」
「流石リボーンさん、鋭いっすね!そうです、オロロージョ・ステラミスの最高傑作、『サクラ』です!」
「さくら…?」


二人の会話は続いていくが、綱吉は全く持って理解出来ていなかった、ごっちゃごちゃだった。




何?さくら?サクラ?桜?
桜ってあの花の桜だよね?ピンク色の。五枚弁の。
確かに、金装飾の模様は桜だけど……?




頭の中で桜のカタカナ、ひらがな、漢字。
その三つに加えて、小さい頃に親と一緒に見に行った桜並木の記憶が脳裏に浮かび上がった。




あれは綺麗だったなぁ………。




などと言う脳内妄想が繰り広げられている間も、リボーンと獄寺は綱吉を蚊帳の外に、話を続けていた。


「こんな大物、どこで仕入れて来たんだ?」
「知り合いにこう言うの集めてる奴がいまして!そいつが譲ってくれたんスよ!」


体から止めどなく「達成感」が溢れ出ている獄寺は、今も得意げな表情だ。
そしてその時計の出所に、綱吉は小さな疑問を持った。


「譲ってくれた…?そんな、高価な物を?」
「そ、そうなんスよ!あ、あいつ、「もういらない」とか言い出しましてっ!」


少しどもり、慌てた様に顔の前で手を振る獄寺を、綱吉は少なからず疑わしいと思った。




何か、隠してる…………。






「……獄寺君、もしかして脅したんじゃないよね?」
「ギクゥウッ!!ち、違いますよ!」






声に出てるよ、獄寺君。




それほど動揺したのだろうが、普通「ギクゥウッ」なんて口に出す阿呆がいるだろうか。

…─────────……それはさておき。
獄寺は元々育っていた環境故に、自らのみを自ら守らなければならなかった。
それでたどり着いた結論が、『ダイナマイト』だ。
始めは、路地裏に偶然落ちていた筒を拾い上げただけだった。

最初は、蝋燭だと思った。
表面に描かれた髑髏の絵も、幼かった獄寺隼人には、かなりカッコ良く見えた。

毎日毎日野宿の生活。
彼には、どうしても『温もり』が必要だった。




そうだ、前に拾ったのを使って…!!




とっさに、そう思った。

前に拾ったのとは、『ライター』の事だった。
金属製のカバーで、蓋を開け、ポチリとスイッチの様な物を押せば、噴射口から小さ炎がともされた。
真っ赤に燃える、不思議な炎。
不思議と、何故か他の人物のほとんどには炎がともせなかった。
ともせたとしても、何故だか自分とは違う色、黄色や緑の炎だった。
最初は気味が悪かったが、自分がともせていた赤の炎はとても暖かく、夜の寒さを生き抜くにはどうしても必要だった。

『蝋燭』と言う物の仕組みは、町を行き交う人達の話を立ち聞きしていて分かった。
胴体からのびている紐に火をつければ良いらしかった。

早速、試してみた幼少時の獄寺氏。
すると筒は、プシュウゥゥ、と言う音を立てながら燃え盛る。
最初の数秒は、「おぉ、これが蝋燭か」と感心していた獄寺。

だけど、『何かが可笑しい』。
そう思ったとき、彼はとっさにそれを上空に放り出していた。



ドカァァアアアアアンッ



と大きく音を立て、筒が粉砕する。
幸い、周りに建物は無かったので被害は小さかった。

少年獄寺はその爆発の様子を目の当たりにし、




すげぇ……!!




そう、素直に思った。



そして、幼い頃の名残か、今もダイナマイトを使い続けている獄寺。
きっと今回も、それを使って「それ渡さねぇと果たすぞ…!!」とか言ったに違いない、きっとそうだ。


「はぁ……」


綱吉は心の中でその獄寺の知り合いへ向けて、合掌した。




いつも獄寺君がお世話になってましゅ、このたびは申し訳ありましぇんですた。…──────────……あ。




心の声であるにもかかわらず、噛み噛みな綱吉。その脳内構造が果たしてでどうなっているのか。たとえ世界最強の科学者であっても解明など出来ないであろう。


「…まぁ良いじゃねぇか。いい品なのは変わりねぇんだぞ、ツナ」
「うん、まぁ……うん。そうだね…」


納得せざるを得ない。
納得しなければ最期、脳天に風穴が開く事になるだろう。


と言う訳で、戻って来たボンゴレ魔法骨董店仕入れ係、獄寺隼人。
そして、一緒に仕入れて帰って来た、オロロージョ・ステラミスの最高傑作、『サクラ』。
これにより、彼らの日常は少しぶれる事になる。

『日常』と言う物が純度百パーセントの水だとすると、今の彼らが過ごしている時間は数パーセントの汚染物が含まれている水。
『非日常』が濁りきった水。
彼らの水に、少しずつ濁りを足し続けている人物。
それが誰なのだろうか、未だ知る由もない。

だけど、確かに彼らの水は少しずつ純度を降下させていた。


彼らの日常が非日常へと変貌を遂げるまで。




















        後 ** 日…───────────……?







(こ、これ、本当に売っても良いのかな……?)
(オロロージョ・ステラミス………数世代前の、『大魔術師』……)
(ワレノコエガ……キコエルカ…?)


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