雪、溶ける。
嘘つき、来る。
私は、嘘つきだ。
昔から、嘘をついて。人を騙して、殺して、傷つけて。
いつの間にか、騙すのが日常になっていた。
こんなのって無い。こんなの望んでない。
何時だって、視界は赤く染まっていた。
赤く、赤く熟した柘榴の様な色。
こんなの見たくない。
あんな武器、持ちたくもないのに。
血を浴びて、さびて、赤くなって。
もう一度も持ちたくはない。
だけど、そんな思いも嘘かも知れなくて。
自分の意志も分からなくて。
心が、黒く埋まってしまうようで。
怖かった。
何も分からなくなった。
───「……大丈夫なのか、雪菜」
───『いやだなリボーンさん、これぐらい平気ですよ』
これは、嘘。
───「……雪菜殿、お体の方は大丈夫なのですか?」
───『はい、大丈夫ですよ?』
これも、嘘。
─────『大丈夫だよ、兄さん。今度は嘘つかない』
これだって、嘘。
ずっと嘘のつきっぱなしで。
自分でも嘘が分からなくなって。
誰も傷づけたくない。
誰にも心配かけたくない。
誰も───殺したくない。
この思いが嘘だったら、私には一体何が残る。
力? 強さ?
そんな物、いらないのに。
でも、本当にいらないのか分からない。
私はなんなの? 一体誰なの?
───本当の思いは、どこなの……?
[←PREVIOUS][NEXT→]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!