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「登る登る登る登る登るぅ!!」
『兄さん頑張って、後もうちょっとだよ!』
「随分登れる様になって来たじゃねぇか」
さすがのリボーンさんも、腕を組んで感心した様に呟く。やっぱり、兄さんの成長は尋常ではないのだろう。
私とリボーンさんは今崖の天辺で兄さんの到着を今か今かと待ち構えている。兄さんが到着するまで後約七メートル。
今回こそは……! と、手を握りしめてどうか行けます様にと祈る。
だけど……。
シュウゥゥ〜……
「……あれ?」
『あッ……!』
後少しと言う所で、死ぬ気モードが解けてしまった。
いけない、今誰も下にいない……!
慌てて飛び降りようとした私を、寸での所で「まぁ待て」とリボーンさんが制止した。
「お、落ちる〜!」と慌てだした兄さんを見て、私は息を呑んだ。
ダメだ、間に合わない……!
「ひぃい〜!!」
『……!!』
予想だにしていなかった光景に息を呑む。
だって、兄さんが登って来ていたのだから。
死ぬ気になってもいないのに。
ただただ、落ちる事への恐怖心で必死に新たな石を探しては掴み、探しては掴み、ついに。
『凄い……! やったね、兄さん!』
「はぁあ〜……」
感嘆の息を呑んで、溜め息をついて放心している兄さんの方へ駆け寄る。
正直に凄かった。まさか、死ぬ気モードが解けてなお、登りきるなんて。
さすが。やっぱりお兄ちゃんには、
『敵わないなぁ〜……』
「へ? セツ、何か言った?」
『……ううん、なんでもないよ』
私の独り言は、リボーンさんの耳にだけ届いて空に消えて行った。
(おめでとう、兄さん!)
(あ、うん、えへへ……)
(何うかれてやがる、第二段階に進むぞ)
(え嘘、第二段階とか聞いてないぞ?!)
(言ってないからな)
(いや言えよ……)
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